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“変人扱いされた少年野球革命”…髪型自由で美容院とコラボ、家族旅行の休みOK「楽しみながら上手くなる」ヒケツを辻正人55歳が語る
text by
間淳Jun Aida
photograph byJun Aida
posted2023/10/04 11:01
グラウンド内外で特色ある活動をしている多賀少年野球クラブ
「準備・予測」は相手打者の傾向によって守備位置を変えたり、場面に応じてどんなプレーを優先するのかなどを選手間で共有したりする。2つ目の「指示」は、チームメートに自分の意思を伝える目的がある。
遊撃手の後方に飛球が来た時、遊撃手が「OK」と自分が捕球する意思を示したり、三塁手や左翼手が遊撃手の名前を呼んで任せたりする。最後の「反省」は走塁ミスやカバーリングの遅れなどが起きた時、どの動きや判断に問題があったのかをチーム全体で確認する。同じ失敗を繰り返さない狙いがある。
多賀少年野球クラブでは練習中の服装に指定はない。夏場は暑さをしのぐため、選手も指導者もTシャツにハーフパンツ姿で体を動かす。辻監督は「暑いのにユニホームを着て練習するのは熱中症のリスクがありますし、練習の効率も落ちます。選手にはスライディングをしないように伝えています」と説明する。
髪型自由どころか美容院とタイアップして…
今夏の高校野球で話題になった髪型に関しても制限はない。それどころか、チームのホームページに掲載されている選手紹介を見ると誰もが驚く。髪型はセットされ、アイドルの宣材写真のような選手たちが並んでいるのだ。辻監督の教え子の姉夫婦が経営している彦根市の美容院「プライベートサロンアフリ」とタイアップ提携して美容室をPRする代わりに、選手の髪型をセットして写真撮影してもらったという。
「元々は子どもたちがかっこよく変身した写真を保護者に渡していました。写真を見た保護者からの評判が良かったので、ホームページに載せたらチームに入りたいと思う親子が増えるのではないかと考えました」
少年野球でも、選手の髪型を丸刈りに揃えているチームはある。辻監督は髪型にルールを設けたことは一度もないという。丸刈りに統一しているチームについては「子どもたち自身が好きで選んでいるのなら構いません。ただ、監督や発言力のある保護者が団結力のような言葉を使って、全員が丸刈りにしないといけない雰囲気にするのは違和感があります。同じ髪型にしたりチームで揃いのTシャツを着たりしなくても団結できます」と話す。
“辞めやすい雰囲気”をあえて作るワケ
チームに入りやすく辞めやすい雰囲気も、多賀少年野球クラブの特徴となっている。