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「律、いつゴールを決めんねん?」堂安律が長友佑都、原口元気“先輩”の叱咤にW杯ドイツ戦で応えたワケ「ピンとこない人も多いと思いますけど」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/09/09 06:00
カタールW杯ドイツ戦で一躍、救世主となった堂安律
ただ、フライブルクはブンデスリーガとヨーロッパリーグを並行して戦っていたため、9月以降は週2回のペースで試合が組まれていた。ダラダラ練習していたら疲れが残り、コンディションを落としかねない。だから、「量」よりも「質」にこだわり、毎日5本のシュート練習に命をかけてきた。
「会場が(W杯の)お祭みたいな雰囲気になっていて、敵はドイツのユニホームを着ていて……。そこまで細かくイメージしながら、コーンを置き、打っていました」
もちろん、その練習には根拠がある。
「技術は(W杯までの)1カ月程度ではそれほど上がることはないです。ただ、そういう状況が来たとき、冷静に、練習通りのイメージで蹴れることが大事で。9割方、イメージを作るためのトレーニングでした」
同点弾を放つ直前、特別な体験とは
だからだろうか。あの同点弾を放つ直前、特別な体験をした。
「少しだけ、周りがゆっくり見えたんですよね……。『あぁ、素晴らしい瞬間を体験できた』。そう思っています」
ドイツ戦でルーズボールを競り合うことになったマリオ・ゲッツェとPSV時代に出会ったことも、新たな能力を磨くきっかけになった。
絶対にヒーローになるという堂安の野心は、昔から変わらない魅力だ。ただ、想いが強すぎるあまり、独力でゴールを決めようとして空回りすることもあった。それが、ゲッツェと出会い、少し変わった。
「一対一で崩すのが無理だと思ったときには、マリオとコンビネーションで崩すことができます。彼はポジショニングが素晴らしい。『そこにいてほしい』と思う時に、そこにいてくれる良い選手だなと思います」