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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「もう俺はいいから外してくれ」西田有志が涙の直談判…男子バレー歴史的快挙のウラで豪快エースが苦しみまくった理由「イップスみたいな状態」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuki Suenaga
posted2023/09/07 11:15
アジア選手権に向けた8月の代表合宿中にインタビューに応じた西田有志。苦しい思いを抱えたまま戦っていたネーションズリーグの時間を振り返った
西田のプレーは本来、身体のしなやかと柔らかさが武器。だがイタリアでは、日本以上に自分より身長の高い選手ばかり。自慢の筋力も上には上がいる。強い相手を倒してやろうと思う気持ちは長所だが、気負いは気づかぬところで裏目に出た。
「力に対して自分はもっと上回ってやろうと思いすぎて、とにかくパワー勝負だと力んでいました。実際ブロックを吹っ飛ばせることもあったし、打ちたいサーブが打てることもあったけれど、たぶん自分が思う以上に負荷がかかっていたんです」
高校を卒業してからVリーグ、日本代表、そしてイタリアリーグへの挑戦とずっとフル稼働してきた。当然、身体も「走れ」と指令するばかりでは悲鳴を上げる。疲労から来る腰や脚の負傷も続き、思うようなプレーができない時期も続く。
休んだほうがいい。休むべきだ。わかっていても目の前で試合が始まればフルパワーで臨んでしまうし、バレーボールの普及につながる活動も疎かにしたくない。はやる気持ちとは裏腹に、満身創痍の身体はケガだけでなく、原因不明の体調不良も引き起こした。高熱で寝ることすらできず、ありとあらゆる検査を繰り返すも、なぜ今この状態が続くのかは解明できない。1年ぶりに復帰したVリーグでも健康状態への不安は消えず、その先のパリ五輪、日本代表のことも考えられない日々が続いた。
「イップスみたいな状態」
検査結果やその時々の体調を医師やメディカルスタッフと慎重に協議しながら、復帰を果たしたのは2022年11月末。年明けも少しずつ試合出場の機会は増えたが、リーグの先にある日本代表でのシーズンに向けたトレーニングやコンディショニングが整っているかといえば、決して十分ではなかった。
気持ちを奮い立たせるも、プレーをすれば本来の動きと程遠いのは自分が一番よくわかる。今年6月6日に名古屋で開幕したネーションズリーグ予選ラウンドの初戦イラン戦ではスタメン出場を果たしたが、難なく打てていたシチュエーションでもスパイクやサーブがネットにかかる回数が増えた。
試合が始まれば解消できると思っていた靄は、晴れるどころか濃くなるばかり。
「同じように打っているつもりでも、全然打てないし理由もわからない。特にサーブは、イップスみたいな状態でした」