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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「もう俺はいいから外してくれ」西田有志が涙の直談判…男子バレー歴史的快挙のウラで豪快エースが苦しみまくった理由「イップスみたいな状態」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuki Suenaga
posted2023/09/07 11:15
アジア選手権に向けた8月の代表合宿中にインタビューに応じた西田有志。苦しい思いを抱えたまま戦っていたネーションズリーグの時間を振り返った
怖いものなしの若さと、豪快なプレースタイル。マンガに登場させるならば間違いなく「ガハハ」と笑う豪快奔放なキャラクターに当てはめられるはずだ。
ただ、内面は先行するイメージとは裏腹にとても繊細。想像をはるかに上回るスピードで幾多もの経験を重ねて自信を得る一方で、壁に当たるたびに落ち込む。試合に敗れれば「自分のせい」と責任を痛感することも少なくないし、試合の中で相手にブロックポイントを立て続けに献上し、「どこを打てば決まるのか」と試合中に迷いと不安で押しつぶされそうになって、ミックスゾーンや取材の場で弱音を吐く姿を見たことも一度や二度ではない。
そんなナイーブさが際立ったのが、男子バレー日本代表が主要国際大会で46年ぶりとなる銅メダルを獲得したネーションズリーグだった。世界中から日本代表が注目を浴びた、まさにその最中に「こんな経験は人生で初めて」という苦しさに直面していた。
「何を優先的にやればいいのかわかんなくなっちゃって。今までだったら、これがダメだからこうやってみよう、あれがダメだからまずやろう、と考えて動くことができたのに、次々に“やらなきゃ”が出てきて、結局順序がバラバラになる。これに手をつけていないのに、こっちはどうするんだ、とか、やればやるほど全部バラバラになって、今の優先順位で考えたら何をすべきか。そもそも試合の時はどんな気持ちで取り組んできたか。全部、ごっちゃごちゃでした」
得意のサーブさえも狂い始める
アタッカーには誰しも「ここでヒットすれば狙い通りの場所へ打てる」と確信できるポイントがある。西田の場合、その最たるものはサーブ。高いトスから最高打点で振り抜くジャンプサーブは自身の調子を測るバロメーターであると同時に、感覚をつかめば「深く考えなくても全部決まる、と思えるぐらい(いい)サーブが打てる」と感じられる絶対的な武器でもあった。
ところが今季はネーションズリーグの期間中に限らず、その前の合宿中から「これだ」と納得できる高さ、スピードで打てなくなっていた。むしろ、あれほど「考えずに」打てたはずのサーブが、どう考えても思うように打てない。
振り返れば、“異変”の始まりは東京五輪を終えてすぐ、単身イタリアへ渡った頃からだったのかもしれない。西田はそう振り返る。
「全部、力勝負で行こうとしすぎたんです。そこからどっか、崩れたのかもしれません」