「まあ、私の方からちょくちょく言っていて、知っていましたからね。こんなにあるとは思わなかったかもしれませんが（笑）」

　理事長はこのように話すが、聞いてみたいのは〈職場に突然、大谷グッズ展示ルームができた〉スタッフ側の心持ちである。理事長のご子息であり、同医院の院長を務める上村優介さんが、理事長やスタッフの気持ちを一番把握しているのではないか。そう思って聞いてみると、優介さんは意外な“理事長評”を口にする。

取材に応じてくれた院長の優介さん。歯科大学時代も野球に打ち込んでいた　©Takashi Shimizu

「いや、もともと理事長は野球に興味がなかったんですよ」

　え、どういうことですか？

「私は中学から大学まで軟式野球をやっていました。昔、テレビで巨人戦などを見ることもあったんですが、そうすると父にチャンネルをかえられたりして（笑）。だからこれほどまでに大谷選手にのめり込むなんて、最初はどうしたんだろう？　というのが正直な心境だったんです」

野球経験のある優介院長にとっては驚きだった、父の大谷への傾倒。今ではサインボールや折れたバットの価値を理解し、収集するまでに　©Takashi Shimizu

大谷のアスリートを超えたエンターテイメント性

　たしかにメジャーリーグに移籍して以降、いわゆる従来の野球好き以外の新たな層の大谷ファンが増えていると聞いたことがある。実際、理事長の英之さんもこんな風に話していた。

「大谷選手は野球選手、アスリートを超えたエンターテインメント性を持つ人なんだと思うんです。ルックスやスタイル、人間性、そして野球の技術がスゴい。それだけのものが合わさっているからこそ、スター性が高まっているのだと思います」

昨年のオールスターのヘルメットも　©Takashi Shimizu

何をやっているんだろう

　そのスター性こそ、大谷が人々を惹きつける最大の理由なのだろう。と納得しつつも……理事長が急にこんなスペースを作ると言われたら、スタッフはザワつかなかったのだろうか。優介院長に聞くと当時をこう回想する。

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