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スポーツ百珍BACK NUMBER
大谷翔平グッズを集めすぎて、診察室まで「大谷部屋」に…“大谷大好き”歯科医が語る「大谷尽くしのクリニック」ができるまで
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byTakashi Shimizu
posted2023/09/04 11:02
大谷部屋の一角。患者さんがいない時間帯に、上村英之理事長の秘蔵の品である額入りのユニフォームと一緒に撮影
「ほとんどの人が“何をやっているんだろう”って感じでしたね(笑)。僕もどちらかといったらスタッフ寄りの考え方でした。個人的には野球好きなのでグッズを見られて嬉しいという感情はありましたが、いち院長として〈これ、防犯とか大丈夫なのかな?〉という心配は大きかったですね。ただスタッフの中では〈ああ、理事長がまた何か作っているね〉っていう感じだったので、そこは医院内で理解が得られているのだと思います」
ちなみに優介院長はワイドショーの取材が殺到したことについて「最初はテレビに出るのは嫌でしたが、こうやって取り上げられて、医院が良くなる方向にいくのだろう」と思っていたという。英之理事長も「普通、歯科医院に対してテレビ局からオファーが来ることはそうそうありませんし、よっぽど特異なことをしないと来ないですからね。だから結果的に、宣伝効果は大きかったのかもしれないですね」とのこと。大谷さんへの愛情がほとばしりまくったことで、結果的に同医院の知名度が上がる。そんな“副産物”にも2人は感謝していた。
今季オフ、FAになる大谷への思い
びっしりと並ぶ大谷グッズ。大谷の活躍とオークション落札によって、そのコレクションは現状の展示ルームに収まりきらないレベルになりつつある。そこに英之理事長は新たなモチベーションを感じているようだ。
「今シーズン限りで大谷選手はFAになりますからね。私としては優勝争いできるチームで早く活躍してもらいたい、というのが正直な心情です。もしエンゼルスから別の球団に移籍した場合、エンゼルスグッズだけがあっても変ですよね。現在、ありがたいことに患者さんが増えているので違う場所にもうひとつ医院を作ろうかという計画があります。そこに移籍先のチームのグッズを置くかもしれませんね」
「翔 METER」をめくる、私の仕事はこれだけ(笑)
展示ルームの入り口には「翔 METER」がある。大谷のホームラン数と勝利数が一目でわかるものになっている。
「いやあ、私の当医院での仕事は毎朝これをめくるだけなんですよ」
上村理事長はこんな風に冗談めかしていたが――その表情は大谷に憧れる子供のようだった。
WBCでの激闘に始まった2023年の大谷翔平には様々な試練が降りかかったのは事実だが、シーズン最終盤は日本人メジャーリーガー初のホームラン王を目指す戦いに臨む。
そんな奮闘する姿を童心に帰って楽しみ、グッズを収集する英之理事長がいて、息子である優介院長や医院スタッフが理事長の方針を受け入れている。何より、その大谷グッズ展示ルームで勉強したり、グッズを熱心に見ている患者の子供たち……。大谷というスター性によって生まれた展示ルームは、誰にとってもWin-Winなショータイム空間なのだろう。
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