甲子園の風BACK NUMBER
高校野球で気になった…「なぜエラー目立った?」元ヤクルト名選手が本音ズバリ「No.1ショートは“初戦敗退校”に」「プロで活躍できる」
posted2023/09/01 06:00
text by
元永知宏Tomohiro Motonaga
photograph by
Nanae Suzuki
名手がうなった「試合」
――プロ野球で13年間、主に遊撃手としてプレーした大引啓次さんは、今回の夏の甲子園で何が印象に残りましたか。
大引 今回は左利きの一塁手の守備のうまさが目立ちましたね。左利きのファーストはショートと正対して構えることになるので、ものすごく投げやすい。私は好きでした。
現在コーチをつとめる日本体育大学や少年野球教室などでファーストを守る選手たちに「内野手をうまくするのは君たちなんだよ」とよく言っています。ワンバウンドや高い送球も、ファーストがカバーすれば安心して投げられますから。特に延末藍太選手(慶応)、今岡歩夢選手(神村学園)は、やわらかくていい守備をしていましたね。
――大引さんは法政大学時代に通算121安打(歴代5位)を記録、プロ野球でも1004安打を放ちましたが、守備に定評があった選手。今回、気になったプレーは?
大引 私が感心したのは、鳥栖工業(佐賀)と富山商業(富山)との試合ですね。両校とも基本に忠実な守りが素晴らしかった。泥臭いプレーに好感が持てました。富山商業の二塁手がグラブトスして遊撃手が送球するというスーパープレーもありましたが、あれも基本がしっかりしているからこそできること。
なぜエラーが目立ったのか?
――今大会では、各チームのショートが三遊間寄りの難しい打球を捕ったり、センターに抜けそうな打球に追いついてそのまま回転して一塁に送球したりするファインプレーも多く見られました。
大引 ここ数年、内野手の構え方、打球への入り方には変化が見られます。「体の正面で捕れ」「両手で確実に」という指導は減っているのではないでしょうか。私はプロで三塁手も経験しましたが、三塁線の強い打球に対して体の正面で捕るよりも、(グローブをした手を身体の反対側に伸ばして片手で捕球する)バックハンドキャッチのほうが確実です。そういう変化が随所で見られますね。