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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
お盛ん男女関係、やらかし伝説の一方で…24歳での「うつ病」から名GKブッフォンが抜け出すまで「若いうちは誰でも失敗するもんだ」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAlessandro Sabattini/Getty Images
posted2023/08/23 11:01
97-98シーズンのブッフォン(当時パルマ)
アラフォーに差し掛かるあたりから「来年までやったらやめる」「いや、やっぱり続ける」といったプロレス的発言を何度かくり返したのも、本人にしてみれば“そのときどきに感じたままを口にしただけ”に過ぎない。
我々日本人は“男に二言なし”とか武士道的な潔さを尊びがちだが、万物は流転する。時間の経過とともに理も自然も変化するのに東洋も西洋もない。
イタリアでも政治家が政策の根拠となるデータを改竄していたり、企業が粉飾決算していたりすれば厳しく糾弾されるが、サッカー選手の引退はいち個人の自由な心情に関することだから、前言を翻しても嘘つき呼ばわりする人間は西洋社会にはいないのだ。
バロテッリにも「若いうちは誰でも失敗するもんだ」
ブッフォンはユベントスでもイタリア代表でも、大事なキャプテンマークを戦友のDFジョルジョ・キエッリーニ(現ロサンゼルスFC)に譲り渡した。
キエッリーニはサッカーに関して恐ろしく厳格な男だ。14年のブラジルW杯当時、恋人に浮かれ代表チーム内の和を乱したFWマリオ・バロテッリ(現FCシオン)を厳しく叱責した。自伝では「やつは代表に望ましくない人間。グループへのリスペクトがない」ときつく断罪している。
ただし、ブッフォンは自分もさんざん無茶をやってきた自覚があるからか、カルチョ界ほぼ全員がさじを投げた悪童バロテッリにも「若いうちは誰でも失敗するもんだ」と今でも寛容なのだ。
本当は自分が一番繊細なくせに、開き直って「さあ、俺に任せろ」と仲間を守り立てる、頼もしさ満点のスーパーマン。
口は悪いが、ハートはでかい。
ブッフォンこそ、イタリアらしさ満点のカピターノだった。
<「ブッフォン45歳の引退」編からつづく>