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「先輩がいてくれるから」 渡辺勇大と東野有紗の“中学時代から変わらない”ペア愛…混合ダブルス快進撃の原動力は“敬意とコミュニケーション”
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/06 11:03
バドミントンジャパンオープン混合ダブルスで優勝を果たし抱き合った渡辺勇大と東野有紗
「組んだ瞬間から息が合った」渡辺と東野
疲労して集中力も途切れそうなとき、どうしてもまわりに目を向ける余裕はなくなってくる。しんどくても、ささやかであっても、声をかけあった。実行することができた。そこに2人の真骨頂がある。
渡辺が「最初から息が合っていました」と語れば、東野は「組んだ瞬間から、練習していなくても息が合いました。話したことがぜんぜんなかったけれどミックスを組んだときはすごく楽しくて。あの瞬間は今でも忘れられないです」。中学生のときに初めて一緒にプレーした瞬間から、絶妙に相性が合った。
26歳の渡辺、27歳の東野は、この年齢にしては世界でも並ぶ存在がないほど長く活動してきて、世界トップを競う位置にたどり着いた。そこには転機もあった。2018年、マレーシア代表だったジェレミー・ガン氏が代表専任コーチに就任。ガン氏の指導により、戦術などさまざまな面で今までにない専門的な強化を図ることができた。
「勇大君は、こういうことを考えていたのか」
そしてガン氏からはコミュニケーションをより大切にするようにアドバイスを受けた。相性がよいと感じていると、明確に伝えていなくても、時になんとなく通じているように思うことはしばしばある。ガン氏は、コミュニケーションが足りないから練習後にもっと話し合うようにと伝えたのだ。
「勇大君は、『こういうことを考えていたのか』と発見もありました」
東野はそう語っている。
相性を大切に育ててきて、同じ方向を向いて戦ってきた。結果として東京五輪での銅メダルも生まれた。
メダルを獲得したあと、渡辺は言った。
「先輩方が作ってくれたレールをさらに伸ばすことができて、これからまだもう少し先のレールを僕らが作っていくつもりです」