雨雲が現れて一瞬にして豪雨に変わった夕方、ネビン監督のオンライン会見が行われた。大谷は当初の予定を1日前倒し、タイガース戦に先発登板することが発表された。この日の雨天順延の影響で27日はダブルヘッダー開催が決まっていた。

　1日で2試合にDHで出場した後にトロントへ移動し、当初予定していた28日のブルージェイズ戦で登板することは負担が大きいと判断した。フィル・ネビン監督は「これは翔平の提案。自分の体を熟知している」と説明。後に確認した話では、大谷は投手陣の練習前にブルペン入りし調整。用意周到だった。

©Getty Images

　その夜、エンゼルスが大谷をトレード候補から外したと米メディアが相次いで伝えた。エンゼルスはそれらの報道を裏付けるようにホワイトソックスとのトレードを成立。大谷は水原通訳から聞かされ、大リーグ公式サイトを通じてホワイトソックスからジオリト、ロペスの両右腕の獲得したことを知ったという。

　今季終了後にFAとなる大谷について、他球団からトレードの打診が相次いでいた。だが直近9試合は7勝2敗で大谷のトレードに元々否定的だったモレノ・オーナーの決断をさらに後押ししたとみられる。

　雨天順延の日に飛び込んできたビッグニュース。記事の執筆は当然、深夜にまで及んだ。

ベンチで監督に「I'm finishing！」

《7月27日 タイガース戦ダブルヘッダー：初完封＋2本塁打、けいれんの舞台ウラ》

©Getty Images

　伝説の1日となった。

　試合前に今夏はトレードされないことが球団から発表されて臨んだ2試合で、投打にフル回転した。第1試合でメジャー初完投を1安打完封で飾り9勝目。8回、97球を投げ終えた後には、ベンチでネビン監督に「I'm finishing」（俺が終わらせます！）と続投を志願。メジャーで初めて9回のマウンドに上がり、最後まで締めた。

　メジャー初完封直後。汗で髪をびっしょり濡らした大谷はクラブハウス外で7分間の取材に応じた。その後、アイシングをする時間はなかった。

【次ページ】　38号直前に見せていた“あるしぐさ”