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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「シーズン73本塁打」「同僚とつかみ合い大ゲンカ」あのボンズが…なぜ新庄剛志を愛したのか? 予想を“裏切った”日本人初メジャー4番の伝説
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byGetty Images
posted2023/08/01 11:00
サンフランシスコ・ジャイアンツ時代に共闘したバリー・ボンズと新庄剛志(2002年)
すでにメジャーでもトップクラスと評されていた守備力は同じ外野を守るボンズから絶大な信頼を得ていたのだが、それ以上に人柄で心をつかんでいた。新庄が移籍したばかりの頃、サンフランシスコ市内に家を探していたがなかなか見つからず、ボンズがその協力をしてくれたという話を聞き「あのボンズが?」と驚いたものだ。
プレーの方は、開幕から打撃の調子が上がらず苦労した。最初の7試合が終わった時点で24打数2安打、0本塁打、1打点で打率は8分3厘と1割にも届いていなかった。
そして迎えた開幕から8試合目の本拠地でのドジャース戦。新庄は試合が始まる直前のベンチで、ボンズに声をかけられたという。
「ヘイ、シンジョー、いいかげんにヒットを打てよ」
その試合で新庄は、4回先頭の2度目の打席でシーズン1号の先制ソロを放った。塁を回ってホームに戻ると打席へ向かう準備をしていたボンズが、新庄をわざわざホームベース前で出迎えて祝福した。さらに試合後には、こんな言葉で新庄を賞賛した。
ボンズの新庄評
「彼はとてつもないセンターだ。彼のおかげで両翼にいるオレとレジー・サンダースは本当にラクだ。彼はこのチームに移籍してきて、相当なプレッシャーを背負っている。どこに行くにもカメラに追われ、気が休まる時間もない。かけられる期待が大きすぎるだけで、彼はよくやっている。シーズンは162試合と長いし、まだこれからだ。チームみんな、今夜の彼を誇りに思っている」
この試合でボンズは9回裏にサヨナラ打を放つ活躍をしてチームの2対1の勝利に貢献し、試合後のクラブハウスで珍しく報道陣の前で話したのだが、新庄を賞賛しただけでなく「自分よりもシンジョーに話を聞いてやってくれ」と花を持たせようとまでしていた。周囲からさんざん「自己中心的」と言われてきたボンズがそこまで新庄への気づかいを見せたのは、本当に信じられない出来事だった。
そしてこの年、新庄はもう一つの「日本人初」を果たす。そう、メジャーリーグ最高峰の舞台、ワールドシリーズへの出場である。
〈つづく〉