西谷は言う。

「ボールをしっかり投げられるので捕手をやらせてみようと思いました。結果的には（ボールが）捕れないというのもあったんですけど、捕手の練習をしているうち、下半身の重要性にも気づいたみたいで、それでピッチャーとして計算が立つようになりました。スプリットを投げられるピッチャーなので、強いストレートとのコンビネーションでクローザー的なこともできるくらいの選手になりました」

　投手ができるようになったことで、大会に入るまでは、大袈裟に言えば二刀流的な役目を担うことも可能だった。同じく、投手として今大会のベンチ入りを果たし、準々決勝でリリーフ登板した境とともに、位置付けとしては投手も野手もやる選手だった。

©Nanae Suzuki

　ところが、夏の大阪大会を勝ち抜く難しさを熟知した西谷監督が、独自のマネジメントを施した。練習ではバッティングにも取り組んでいる平嶋と境を、今大会限定で投手専門にしたのである。

　その内情を西谷が明かす。

「もともと境と平嶋は野手として期待できる選手。昨年秋の神宮大会では境をセンターで使っていましたし、平嶋もレギュラーを取れるんじゃないかなと思っていたんです。それでさっき言っていたような経緯があり投手として頑張ってもらうことにしました。夏の大阪大会を勝ち抜くのは大変です。1週間で5試合くらいあるので、2人には専念してもらうということです。もちろん、グラウンドではバッティングも練習していますけどね」

「今年はほんと打撃力がないチームです」

　一方、打線は安打と好走塁を重ねて1回に3点を先制。4回には打者一巡の猛攻を仕掛けて5点を追加し、試合の主導権を握った。6回に制球を乱して2点は失ったものの、すぐさまその裏に3点を奪う効果的な攻撃を見せた。

【次ページ】　やっぱり強い…「成果が少しずつ出てきた」