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「今年は打てないチームなので」…“56連勝ストップ”今季の大阪桐蔭は例年よりも弱いのか?「猛打」無きチームのホントのところ
posted2023/07/29 06:00
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Fumi Sawai
56連勝。
大阪桐蔭が2020年秋から23年の春の決勝まで、大阪で積み上げた白星の数だ。
大会の数にすると7大会、負けなかったことになる。
だが、今年の大阪桐蔭はセンバツ後、何かと様々な姿を“らしくない”と評されてきた。
春季大会ではドラフト候補と言われるエースの前田悠伍をコンディション調整のためベンチから外し、前田抜きで公式戦を戦うことを敢行した。
一昨秋から前田は主戦級でマウンドに立ち続けていたため、エースを外して戦えるか春の大会で“試す”ことは何も不思議ではない。
ただ、連勝が途切れることになる春の府大会決勝の金光大阪戦、近畿大会の初戦の智弁学園(奈良)と公式戦で連敗を喫する大阪桐蔭は、近年で見たことがなかった。
さらに、6月1日の享栄高校、栄徳高校(ともに愛知)との招待試合でも続けて敗れた。当時、センバツ以降マウンドに立っていなかった前田が「登板するのでは?」と集まった報道陣が、桐蔭の招待試合での連敗を報じたことで、世間では”大阪桐蔭は大丈夫なの?“という声も聞こえてきた。
「他のチームなら何も言われないのに桐蔭さんだから……」
府内のある高校の監督が、先日こんなことを話していた。
「大阪桐蔭さんは結果を残している分、常に注目の的で公式戦でなくても、練習試合で勝っても負けてもニュースになる。ちょっと調整したいからってエースをベンチから外しても、他のチームなら何も言われないのに桐蔭さんだから色んな憶測が飛び交ってあり得ない情報も出てしまって……。この情報過多な時代、気の毒やなとは思いますよ」
SNSの発達で、些細な情報でも大阪桐蔭となると大きなトピックとして扱われてしまう。
少しでもネガティブな情報になると、それが“盛られて”広まる。特に公式戦のない6月は、公の舞台に立たないため、その報道が現実なのか分かりづらくなるのも何とも複雑だ。
大阪桐蔭は毎年5月末から6週間、真夏の暑さに耐えるためにVジャンやグラウンドコートを着込んでの走り込みなどを敢行する、“追い込み練習”がある。今年も近畿大会前から始まり、6月となるとその追い込み練習による疲労がピークとなる。その6月は週末に遠征による練習試合も多く組んでいるため、移動の疲れも重なってしまう。
だが、それもまさに現在の時期のような酷暑の下での試合を乗り切るため――。選手たちはそう割り切り、苦しい練習を重ねてきた。