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「里見香奈-西山朋佳」リマッチ実現、“専門医と二刀流で昇級”や鎌田美礼15歳デビューも…美しく厳しい「女流順位戦」の世界
posted2023/07/27 11:00
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Sankei Shimbun
ヒューリック杯第3期白玲戦の予選リーグに当たる「女流順位戦」は、ABCDの各クラスの最終戦が7月中旬までに行われ、挑戦者、昇級者、降級者がすべて決まった。最終戦では、リーグ戦に付き物のいろいろな盤上ドラマがあった。激烈な昇級争い、深刻な残留争い、タイトル経験者の自主引退、不戦敗による明暗、「米長哲学」の実践、病気を克服して昇級、新人女流棋士の活躍などについて、田丸昇九段が解説する。
白玲戦の七番勝負、勝者には1500万円の賞金が
2020年10月に創設されたヒューリック杯白玲戦は、序列第1位の女流タイトル戦である。白玲の保持者と挑戦者で七番勝負が行われ、勝者は女流棋戦で最高額の1500万円の優勝賞金を得られる。
また、リーグ戦方式の「女流順位戦」が特徴で、A級~D級の4クラスに分かれる。ほかの女流棋戦の予選はいずれもトーナメントで、1回戦で敗れると1局しか指せない。白玲戦では、各リーグ戦で1人あたり8局~9局を指せる。
白玲戦の主催者は、「女流棋士にはもっと強くなってほしい」との思いからリーグ戦方式にしたそうだ。女流棋士は対局数が増えて張り合いが生じ、全体のレベルアップにつながっている。
第3期白玲戦の各クラスの最終結果を伝える。
【A級 定員は10人で各9局。挑戦1人、降級2人】
一番の挑戦候補は、前白玲の西山朋佳女流三冠(28=女王・女流名人・女流王将)。次いで、前清麗の加藤桃子女流四段(28)、前女流名人の伊藤沙恵女流四段(29)らのタイトル経験者。
実際に8回戦の終了時点で、西山女流三冠が7勝1敗で独走し、いずれも5勝3敗の加藤女流四段、伊藤女流四段、山根ことみ女流二段(25)を制して、白玲戦の挑戦者になった。
里見香奈白玲(31=清麗・女流王座・女流王位・倉敷藤花を合わせて女流五冠)に西山女流三冠が挑戦する第3期白玲戦七番勝負の第1局は、9月2日に都内ホテルで行われる。女流五冠対女流三冠の頂上決戦で、西山のリターンマッチでもある。
女流順位戦もまたA級在籍が一流の証となる中で
プロ棋士が一流たるステータスは、順位戦でA級に在籍することだという。女流棋士もそれと同じく、女流順位戦でA級に在籍することが一流の証となる。
その意味で、A級の地位を守る残留争いが注目された。最終の9回戦を迎えた時点で、2勝6敗の中村真梨花女流四段(36)のB級降級がすでに決まっていた。
残りの降級枠は、8位・3勝5敗の渡部愛女流三段(30)、4位・2勝6敗の中井広恵女流六段(54)の2人にしぼられた。順位の関係で、渡部●中井○だと、渡部が降級する。そして、両者は最終戦でいずれも敗れ、中井のB級降級が決まった。