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「里見香奈-西山朋佳」リマッチ実現、“専門医と二刀流で昇級”や鎌田美礼15歳デビューも…美しく厳しい「女流順位戦」の世界
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph bySankei Shimbun
posted2023/07/27 11:00
2022年の第2期白玲戦。第3期も、白玲と挑戦者を入れ替えての「里見香奈-西山朋佳」のカードとなった
鈴木女流三段は前期にA級から降級したが、野原女流初段に勝てば1期で復帰できる。一方の野原は、敗れるとC級に降級する。両者の対局は、鈴木が好調に攻めて有利になったが、終盤で寄せを誤って形勢がもつれ、野原が逆転勝ちした。「最高峰の舞台でまた指したい」という、鈴木の思いは叶わなかった。
そして、室田女流二段も北村女流二段に敗れた結果、順位上位の石本女流二段がA級へ復帰昇級した。塚田女流二段の不戦敗が思わぬ明暗を分けた。C級に降級は、千葉女流四段、岩根女流三段、山田女流四段。
女流棋士かつ専門医の伊奈川愛菓女流二段が昇級
【C級 人員は20人で各8局。昇級3人、降級4人】
伊奈川愛菓女流二段(32)と和田あき女流二段(25)が7連勝し、最終戦の前にB級昇級を決めた。
伊奈川は医師免許を持っている。女流棋士として活動しながら、特定の医療機関に所属せずに専門医として研鑽を積んでいる。和田は女流棋士1年目の2015年、マイナビ女子オープンの挑戦者決定戦に進出した実績がある。
残りの昇級枠は、4位・5勝2敗の室谷由紀女流三段(30)、15位・5勝2敗の加藤結李愛女流初段(20)が有力だった。しかし、室谷女流三段は山口恵梨子女流二段(31)に192手もの激闘の末に敗れた。加藤女流初段も本田小百合女流三段(44)に敗れ、5連勝から3連敗して失速した。その結果、7人が5勝3敗で並び、最上位の武富礼衣女流初段(24)がB級へ復帰昇級した。
女流棋士が実践した“米長哲学”
ちなみに、私こと田丸九段の弟子の小高佐季子女流初段(21)は、3位・5勝3敗で次点となった。D級に降級は、竹部さゆり女流四段(45)など4人。
米長邦雄永世棋聖は現役時代、「相手の大事な一戦こそ全力で戦え」と提唱していた。
いわゆる「米長哲学」で、それによって勝負の運気が上がるという。前述の山口女流二段と本田女流三段は、来期の順位を上げるために懸命に戦ったわけだが、結果的に米長哲学を実践することになった。来期に期待したい。
「舌ガン」と戦いながら昇級した堀彩乃女流1級
【D級 定員は32人で各8局。昇級4人、降級点7人】
12位・7勝1敗の大島綾華女流初段(20)、7位・6勝2敗の渡辺弥生女流二段(43)、10位・6勝2敗の内山あや女流初段(19)、17位・6勝2敗の堀彩乃女流1級(30)が、C級へともに昇級した。