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「里見香奈-西山朋佳」リマッチ実現、“専門医と二刀流で昇級”や鎌田美礼15歳デビューも…美しく厳しい「女流順位戦」の世界
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph bySankei Shimbun
posted2023/07/27 11:00
2022年の第2期白玲戦。第3期も、白玲と挑戦者を入れ替えての「里見香奈-西山朋佳」のカードとなった
中井は、女流名人(クイーン名人)、女流王将、女流王位、倉敷藤花のタイトルを通算19期(歴代3位)獲得した「レジェンド」。A級の最年長棋士として経験を生かして奮闘してきたが、若い勢力に抗しきれなかった。
甲斐智美女流五段が終えた26年の現役生活
なお、今期白玲戦でA級に残留した甲斐智美女流五段(40)は、今年1月に自主引退を表明していて、7月3日の白玲戦の対局が最後の公式戦となった。26年間の現役生活で、タイトル獲得は女流王位、女王、倉敷藤花と通算7期。2013年にはプロ公式戦の王位戦で、A級棋士の深浦康市九段に見事に勝った。
甲斐女流五段は記者会見で、次のように語った。
「13歳で女流棋士になってから、悩んだり試行錯誤することがありましたが、振り返ってみると、すべて楽しかったと思えるのが不思議なところです。女流棋士は戦う相手でありながら、互いに成長し合える仲間とも思っていました。引退後は将棋の一ファンとして、ネット中継などの対局を見て楽しみたいと思います」
甲斐は、今後の進路として、将棋とは異なる分野で新しい挑戦を始めたいという。新天地での活躍に期待したい。
塚田恵梨花女流二段の躍進、最終戦はなぜ不戦敗?
【B級 定員は10人で各9局。昇級2人、降級3人】
元女流王将の香川愛生女流四段(30)、タイトル挑戦経験者の山田久美女流四段(56)、千葉涼子女流四段(43)、岩根忍女流三段(42)らの実力者と、石本さくら女流二段(24)、塚田恵梨花女流二段(24)、野原未蘭女流初段(19)らの若手が混在している。
昇級争いは接戦が予想されたが、塚田女流二段が8連勝し、最終戦の前にA級初昇級を決めた。塚田は2021年にマイナビ女子オープンで挑戦者決定戦に進出した実績があり、実力をめきめきと伸ばしている。
最終の9回戦を迎えた時点で残りの昇級枠は、有力な順に2位・5勝3敗の鈴木環那女流三段(35)、8位・5勝3敗の室田伊緒女流二段(34)、1位・4勝4敗の石本女流二段の3人にしぼられた。
鈴木女流三段と室田女流二段の対戦相手は、前者が野原女流初段、後者が北村桂香女流二段(27)。いずれも4勝4敗で、敗れるとC級降級、またはその可能性があった。昇級と降級がからむ対局は、リーグ戦の最終戦でありがちだ。
石本女流二段の対戦相手は塚田女流二段。実は、塚田は出産を控えていて、関西での対局は無理という主治医の診断によって事前に不戦敗を申し出ていた。最終戦だったため、対局日と対局場の変更はできなかった。