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《独占告白》ヌートバーがいま明かすWBC秘話「オオタニの通訳から謎のメッセージがきて…」ダルビッシュには「いきなりでビビっちゃって」
text by
ブラッド・レフトンBrad Lefton
photograph byGetty Images
posted2023/07/21 17:02
日系人の現役メジャーリーガー初の侍ジャパンのメンバーとしてWBCでハッスルプレーを連発したヌートバーが現地インタビューに応じた
文面は“以下にある私の携帯電話番号にご都合のいいときにお電話いただければありがたいです”というものだった。
「イッペイとは一面識もなかったけどすぐに電話した。だって、ショウヘイオオタニの関係者から電話をくださいと言われたらすぐに従うでしょう」
水原の用件は、半年後に行われるWBCについてだった。
「まだ何も決まってはいないけれど、もし侍ジャパンに選出されたときは興味があるか知りたいと。“マジか!”と。考える理由なんてない。その場ですぐに『イエス』『オフコース』と答えたんだ」
約2カ月後。南カリフォルニアにある実家からオンラインで栗山監督と初めて顔を合わせ、選出が決定したことを伝えられた。こうして日系人の現役メジャーリーガー初の侍が誕生した。
実は”たっちゃん”も当初、緊張だらけだった
ヌートバーにとって最初の目標はできるだけ早くメンバーと一体感を築くこと。ヌートバーは以前、こう語っている。
「日本に到着する前に少しでも溶け込めたらとチームのグループチャットにも参加したし、セイヤ(鈴木誠也)と代理人が一緒なので彼にも助けてもらった。注目を集めるササキ(佐々木朗希)とかヤマモト(山本由伸)のピッチング映像も見ている。なによりオンライン通話で栗山さんと話したときにとても安心した。紳士で母にも挨拶したいと気遣ってくれ、本当にチームの一員だと感じさせてくれたんだ。僕も日の丸のユニフォームにとてもプライドがある。みんなと一緒にこのユニフォームに身を包んで、力を合わせてWBC制覇に向かっていきたいと思った」
来日してすぐさまリードオフマンとして巧打者ぶりを発揮し、明るい性格でムードメーカーとしても大活躍したヌートバーに日本人たちは心を打たれた。しかし、実はあの“たっちゃん”も未知の環境に対して当初は緊張だらけだった。
宮崎合宿がメジャーキャンプの開始と重なり、メジャー所属選手は3月6日まで強化試合への出場を許可されなかったため、ヌートバーも合流が遅れた。名古屋で侍と合流するまで一緒に戦うチームメイトやスタッフとは誰一人直接会えなかった。
「合流したときに受け入れて信頼してもらえるか不安はありました。そんなときに大きな存在だったのがカージナルスのキャンプでルームメイトだったドリュー・バーヘイゲン('20-'21年日本ハム、右投手)。栗山監督の下で2年プレーした経験があり日本の球界に詳しく、様々なアドバイスをもらいました。栗山監督が親切でやりやすいとか日本での経験は最高でもう一度プレーしたいという言葉を聞いて緊張感を抑えられた。先日彼には『あのときのお前の言葉は大きかったよ、ありがとう』って伝えたよ」
ダルビッシュと面会「いきなりでビビっちゃった」
来日後最初の全体ミーティングでチームメイトが、ヌートバーのミドルネーム“タツジ”由来のTシャツを着て仲間として受け入れてくれたことで緊張がほぐれた。