テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
「ショウヘイを困らせたくないからね」大谷翔平トレード報道過熱も“TVに映らない”現場取材日記「無言でシャワーを」「凄さを形容する言葉が…」
posted2023/07/22 06:00
text by
柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph by
Ronald Martinez/Getty Images
《7月14日 アストロズ戦:敗戦の切り替えはスマホゲーム?》
オールスターを終えて、エンゼルスに戻ってきた大谷翔平の後半戦開幕戦はほろ苦い結果となった。
チーム6連敗、借金2はともに今季ワースト。先発投手を務めた大谷自身も右手中指の爪が割れるなど、6回途中5失点(自責点4)で5敗目を喫した。味方の拙守、降板のタイミングなどでは不満そうな表情を浮かべていた。
自身初のプレーオフ進出が遠ざかり、試合後の囲み取材は話が弾まないのでは――と心配したが、決してそんなことはなかった。「自分自身(の投球)が思い通りではなかった」と語ると、その後はクラブハウスのロッカーで水原一平通訳とスマートフォンのゲームに興じ、笑顔を見せていた。
気持ちの切り替えが早い大谷だが、この時ばかりはあまりの早さに驚いた。
エンゼルスとアストロズのGMが30分会談
《7月15日 アストロズ戦:サヨナラ勝利もどこか控えめな笑顔》
試合中盤。エンゼルスのペリー・ミナシアンGMがバックネット裏3階席で観戦中だったアストロズのダナ・ブラウンGMのもとを訪れた。記者室の真横だ。もちろん記者には目もくれず、会談は約30分にわたった。8月1日(日本時間2日)のトレード期限を控え、米報道はもちろん、各球団の編成担当者も忙しなく動いている。
大谷は3点ビハインドの9回に後半戦初本塁打の33号ソロを放ち、表情を変えずにダイヤモンドを一周した。エンゼルスは同点に追い付き、延長10回にサヨナラ勝利。その歓喜の輪でも大谷の笑顔はどこか控えめだった。胸中やいかに。
《7月16日 アストロズ戦:痛恨の逆転負け、無言でシャワーを》
連日のように過熱するトレード報道。大リーグ専門局「MLBネットワーク」が流れるクラブハウスの大型テレビでも、常に大谷のトレード話が話題の中心になっている。
この日はレイズのエリク・ニアンダー編成本部長が獲得に動くことを示唆した。
アストロズとの3連戦最後の一戦を前に、フィル・ネビン監督は「監督として(移籍騒動は)コントロールできないこと。勝ち続ければ残りのシーズンをともに過ごせる可能性が高くなるのは明らか」と語っていたが、4点リードを守れず痛恨の逆転敗戦を喫した。
試合後のクラブハウスは静寂に包まれ、9回に2戦連発の34号ソロを放った大谷も無言のままシャワーを浴びた。