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上半身が全部つって→“まさかのアドリブ”に関係者ビックリ…高校時代の異名「無限くん」はどう進化した? 橋本大輝の現在「体操が好き」 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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posted2023/07/17 11:02

上半身が全部つって→“まさかのアドリブ”に関係者ビックリ…高校時代の異名「無限くん」はどう進化した? 橋本大輝の現在「体操が好き」<Number Web> photograph by AFLO

1年後に迫ったパリ五輪。進化を続ける体操日本のエース・橋本大輝に迫る

高校時代の異名は「無限くん」

 とっさに出せる高度な技術の他にも、橋本を力づけていたことがある。手首を痛めた状態でライバルの中国選手に競り勝って優勝した昨年11月の世界選手権での経験だ。

「あの時、手首が痛い痛いと言いながらも6種目をやり切って金メダルを取ったことが自信になった。ケガをかばわず、自分の演技に没頭して、やれることをやれば、僕は優勝できると思っている」

 人一倍の体力で多くの練習をこなし、「無限くん」と呼ばれていた市立船橋高校時代。日本伝統の美しい体操を身につけたいという理想を抱いて順天堂大に進学し、次々と習得した新しい技を武器に史上最年少の19歳で個人総合を制し、種目別鉄棒と合わせて2冠に輝いた東京五輪。その後も意欲はとどまるところを知らず、高難度技の代償である身体への負担という悩みとも付き合いながら、つねに新しい自分を見せようと抗い続けてここまで来た。今春の一連の戦いぶりについて順大の冨田洋之コーチは、「たとえ万全でなくても、それを踏まえて自分ができる試合運びを見定めている。だから大崩れしない。立派に成長してくれている証だ」と目を細めている。

「今だけで終わりたくない。体操が好き」

 骨折で練習内容に制限がかかっていたことを逆手にとり、基本を磨き上げた時期があったことも、強さにつながった。そのひとつは、あん馬の基礎である「旋回」の技術を見直したこと。教育実習で行っていた母校の市立船橋高校で恩師の神田眞司コーチから指導を受け、旋回が小さくなっていることを指摘された。

「落ちない練習しかしていなかったから、動きが縮こまっていた。自分では感じ取れていなかったことだった。高校生の時の気持ちに戻りながら、もう一度基礎に戻って大きな旋回をすることを心がけた」

 その成果が出たのは4月の全日本個人総合選手権。あわや落下という場面で、「足先を遠く大きく回したことによってスムーズに最後まで旋回ができた」と笑顔を見せた。

 弱点種目であるつり輪の強化も進んだ。「ホンマ十字」など力技の姿勢が良くなり、静止時間も十分な長さになった。鉄棒では降り技で前方へ飛距離が出すぎる部分を修正。着地がピタリと止まるようになった。

「今だけで終わりたくない。体操が好きなのでまだまだやり続けたい」

 橋本の言葉はいつもブレない。

 東京五輪を制した時は19歳。パリ五輪でもまだ22歳。'28年ロサンゼルス五輪まで視野に入れている生粋の体操好きは、どんな時も前だけを見つめている。

橋本大輝(はしもと・だいき)

2001年8月7日、千葉県生まれ。'20年、市立船橋高から順大に入学。東京五輪では男子団体で銀、個人総合と鉄棒で金。今年は全日本選手権とNHK杯で3連覇達成。166cm、57kg

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