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「あの男、甲子園だけ笑うんよ」上甲正典の宿敵、明徳義塾・馬淵史郎が明かす“上甲スマイル”の真実「笑顔なんて見たことがない。鬼。鬼ですよ」 

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藤島大

藤島大Dai Fujishima

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photograph byHideki Sugiyama

posted2023/07/19 11:00

「あの男、甲子園だけ笑うんよ」上甲正典の宿敵、明徳義塾・馬淵史郎が明かす“上甲スマイル”の真実「笑顔なんて見たことがない。鬼。鬼ですよ」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

上甲正典の代名詞とも言える「上甲スマイル」。その実像を肝胆相照らす仲だった老将と教え子たちの証言で振り返る

「スマイルではありませんね。このあと怒るから笑ってる。プラスマイナスはゼロ。試合中、怒っているほうがこちらは安心してプレーできるんです。笑い始めると『この試合、勝たないとまずいな』と」

 宇和島東の野球部を率いる数学の教師、長瀧剛が、なんだか楽しそうに教えてくれた。上甲監督のもと同校で'97年の春と夏、外野手として甲子園出場を果たした。

笑いながら「宿舎、帰ったら覚えてろよ」

 次は済美の元エースのコメント。

「練習中に笑うことはまずなかった。試合では笑ってますけど……いまだから話せますけど、笑いながら『宿舎、帰ったら覚えてろよ』とか。見逃し三振なんかすると、よく笑ってました」

 2年のセンバツで準優勝、楽天イーグルス、安樂智大の青春の記憶だ。

 どうやら甘い笑みではない。ではスマイルの実相とは?

明徳義塾・馬淵史郎が語る「上甲スマイル」

 語ってくれる人物ならわかる。さっそく高知市内からレンタカーを走らせた。「この先に本当に学校があるの」とつぶやきたくなるガードなしの細い山道を曲がって曲がって少しずつ下る。

 午前9時。グラウンド内の高いところの部屋にその名将はいた。

「上甲スマイル、よう(本人が)言うてましたよ。『ここ、口角上げたらね。笑ってるように見えるんよ。練習せな、あかんよ』って。とても僕はできませんでしたけど。あの人は上手やったですよ。笑いながら、足でこう」

 甲子園で通算54勝、高知の明徳義塾高校野球部監督の馬淵史郎が笑わずに、でも柔らかな表情のまま、ちょっとだけ右のつま先を前に送る仕草をした。

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