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「ヨシダはどんな性格? 趣味は何だ?」レッドソックスが欲しがった『吉田正尚のトリセツ』オリックス打撃コーチが明かす“マル秘会議”の全貌
posted2023/06/30 11:02
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Getty Images
メジャーに行っても“安定感”は変わらない。ボストン・レッドソックスの吉田正尚である。メジャー1年目にも関わらず、打率は3割前後をキープしており、ア・リーグの打撃ランキングの上位につけている(6月29日時点では打率.299で6位)。
環境も言葉も、ルールも違う海外の新天地で1年目から結果を出すことは並大抵のことではない。しかも吉田は5年総額9000万ドルという大型契約。球団やファンの期待の大きさはプレッシャーにもなりかねない。
その中で当たり前のように安打を重ね、打率を残せるのは、もちろん吉田自身の技術や対応力、タフさがあればこそだが、その陰には、新旧所属チームの知られざるサポートもあった。
首脳陣が求めた「吉田正尚のトリセツ」
吉田は昨年12月、ポスティングシステムを利用し、7年間プレーしたオリックスから、レッドソックスへ移籍した。
吉田が念願だったメジャーでの初シーズンに備え、自主トレに励んでいた頃のことだ。レッドソックス側からの要望で、オリックスのスタッフ陣とのオンラインミーティングが開かれた。
レッドソックスからは、アレックス・コーラ監督、ピート・ファッツェ打撃コーチ、カイル・ハドソン外野コーチなど5人ほどが参加。オリックスからは辻竜太郎打撃コーチとデータ分析を担当する2人の計3人が出席した。
はじめに、レッドソックス側からはミーティングの目的をこう伝えられたという。
「技術的なことは言うことがない選手なので、何よりも、ヨシダがどれだけ気持ちよく打席に立てるかが重要。そのための相談をさせてほしい」
辻コーチは振り返る。
「正尚を迎え入れるにあたって、どんな準備をしたらいいのかということが知りたかったようです。より良い環境で受け入れようと、オフシーズンにこんなに細かいことにも時間を割いてやっているのかと、そこはすごいなと思いましたね。結果を出してほしいという思いが伝わってきました」