猛牛のささやきBACK NUMBER
「ヨシダはどんな性格? 趣味は何だ?」レッドソックスが欲しがった『吉田正尚のトリセツ』オリックス打撃コーチが明かす“マル秘会議”の全貌
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byGetty Images
posted2023/06/30 11:02
WBC後の合流にも関わらず、安定した打撃を発揮し、すぐにチームにも馴染んだ吉田正尚。その陰には新旧球団によるミーティングがあった
そんな手のかからない吉田だが、辻コーチがレッドソックスの首脳陣に強く勧めたのは密なコミュニケーションだった。
「野球に対しては、前向きで言うことのない選手ですけど、こちらから話しかけないと、あまりしゃべらない人ですよ、というのは言いました。だからコミュニケーションは取ってくださいと。『朝、何食べた?』とか、なんでもいいから話しかけたほうがいい。ほっといたら、日本でもあまりしゃべらないほうなので、そういう気遣いはしてあげてもらえますか、と伝えました」
そう語る辻コーチは、まるで娘を嫁にやる父親のようだ。
こうして吉田正尚のトリセツは受け継がれた。
新旧チームの“共有”のおかげで
きっとレッドソックスの監督、コーチ陣はそうしたアドバイスをもとに、キャンプから積極的に吉田とコミュニケーションをはかったのだろう。
WBC出場のためチームを離れていた吉田が、久しぶりにレッドソックスのキャンプ地に姿を現した時の映像に、彼らの努力の跡が垣間見えた。
コーラ監督に「疲れてるんじゃないか?」と聞かれた吉田が、間髪を容れず「疲れた」と英語で答え、寝ていたというようなジェスチャーで笑わせたあと、ガッチリと堅いハグを交わした。
まるで我が家に帰ってきたかのようにリラックスした吉田の様子に、短いキャンプ期間だけで随分打ち解けているんだなと驚いたが、その陰に、新旧チームによるミーティングがあったと聞いて納得した。