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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「自分の血を見て興奮しちゃったんですかね(笑)」中谷潤人25歳が明かす“ラスベガス衝撃のKO” モロニーを沈めた一撃は「想定通りだった?」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFP=JIJI PRESS
posted2023/07/02 17:00
ラスベガスで衝撃のKO劇を見せた”ネクストモンスター”中谷潤人(25歳)
中谷 いい試合だった、と。とても喜んでくれましたね。
――アリゾナでの試合はありましたが、ラスベガスは初めて。それもボクシングの歴史で数々のドラマを生み出してきたMGMグランド。4団体統一ライト級タイトルマッチのデビン・ヘイニーとワシル・ロマチェンコというビッグマッチのアンダーカードとして入ったわけですが、MGMの雰囲気は実際どうでした?
中谷 どっちのパンチが当たってもどよめきじゃないですけど、歓声がダイレクトにくるので気持ち良く戦うことができました。ヘイニーとロマチェンコの試合も、リングサイドに席を用意してもらって観戦できました。(メーンの)空気感みたいなものを感じ取れたことも今後に向けては良い経験だったと思っています。
――ラスベガスの舞台でインパクトのあるKO勝利を収めた意義を、どのように感じていますか。
中谷 僕はこれまで一発で試合を終わらせるようなタイプではなかった。どちらかと言うと手数で(相手の心を折るように)倒していくほうだったので、あの舞台でいいパンチを当てて終わらせたことは凄く自信にもなりました。過程を大切にするボクサーではあると思うんですけど、一発にも期待をもってもらえるようになれたら良かったなとは思います。
――試合を終えてからも興奮冷めやらずで、あまり眠れなかったのでは?
中谷 実はそうでもなかったんです。アリゾナで試合をしたときは、興奮がなかなか収まらなくて2日くらい眠れなかった。でも今回は4時間ほど眠れました。時間としては短いとは思うんですけど、それでも自分としては眠れたほうでした。
敗者・モロニーから勝者・中谷への言葉
現地では年間最高KO賞候補との声もあがっているという。ジュント・ナカタニの知名度が一気に上がったことは言うまでもない。元WBA同級王者に対して3度奪ったダウンはいずれも違うパンチであり、バッティングでカットしたアクシデントにも冷静さを失わず詰め将棋のごとく追い詰めて、あの“衝撃の一発”に結びついたのだから。
試合の翌日、中谷はMGMのホテル内で歩いていたモロニーの姿を見つけた。
呼び止めたものの気づいてくれず、ポンポンと体を軽く叩いて分かってくれた。中谷のパンチで鼓膜が破れてしまったのだという。
中谷は「ちょっとした会話」の後「ありがとう」と、いい戦いができたことにあらためて感謝の言葉を直接伝えた。そして敗者は笑顔を向け、勝者にこう返した。
「ジュント、いい未来を築いてくれ」
お互いに最後まで勇敢に戦ったからこそ、ボクシングファンの記憶に刻まれるドラマが生まれた。
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後編では、”ネクストモンスター”の異名をもつ中谷が、本家モンスター・井上尚弥をどう見ているのか。そして、パウンド・フォー・パウンドへの飽くなき野心を語る。
<続く>
中谷潤人(なかたに・じゅんと)
1998年1月2日、三重県生まれ。現WBO世界スーパーフライ級王者。元WBO世界フライ級王者。世界2階級制覇王者。2023年5月20日、ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナでアンドリュー・モロニーとのWBO世界スーパフライ級王座決定戦を行ない、最終12R2分42秒でKO勝利をおさめた。戦績は25戦25勝(19KO)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。