井上尚弥vsフルトン急転直下の“最高級のカード”はなぜ実現した？ 米識者たちが明かす舞台裏「フルトン本人が反対する陣営を説得した」

「井上はいい選手だが、スーパーバンタム級では実績がない。スティーブン自身は日本開催でも井上と戦うと言うだろうけど、王者はスティーブンの方なのだから、そうする必要はないと思う。次戦は2月25日、ミネアポリスでブランドン・フィゲロア（アメリカ）との再戦だと聞いているよ」

　1月8日、ワシントンDC。ジャーボンテイ・デービス（アメリカ）対ガルシア（ドミニカ共和国）戦の会場となったキャピタル・ワン・アリーナで顔を合わせたWBC、WBO世界スーパーバンタム級スティーブン・フルトン （アメリカ）の陣営関係者は、筆者にそうまくしたてた。

　そこでの言葉を聞く限り、後に世界中のボクシングマニアを震撼させることになるフルトン対井上尚弥（大橋）戦が実現に近づいているとは到底思えなかった。

　フルトン本人に確認しても、「次はフィゲロア戦の予定。ただ、フェザー級に止まるつもりはないけどね」と言葉少な。普段は陽気で喋り好きなフルトンが妙に大人しく、日本人記者との対面をむしろ避けようとしていることが少々気にかかったが、その時点ではフィゲロア再戦の挙行をそれほど疑わなかった。

フルトン（右）はフィゲロアとの再戦を示唆していた　©Getty Images

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陽気なフルトンが珍しく口を閉ざしていた

　ところが――その直後、米東海岸に拠点を置くある関係者から「フルトンは君の国に行くことになるかもしれない」と聞かされ、ほとんど仰天する。そこでようやく、軽量級ビッグファイトが水面下で動いていることに気づかされることになった。

　冒頭で述べた通り、1月上旬時点でフルトンにかなり近い人間でも知らされていなかったのだからまさに“トップシークレット”。交渉の窓口になった帝拳ジム・本田明彦会長の「陣営は反対していた」という言葉は真実であり、交渉の繊細さを考えればフルトンが珍しく口を閉ざしていたことも理解できる。

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