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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「自分の血を見て興奮しちゃったんですかね(笑)」中谷潤人25歳が明かす“ラスベガス衝撃のKO” モロニーを沈めた一撃は「想定通りだった?」
posted2023/07/02 17:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
AFP=JIJI PRESS
<NumberWebインタビュー全2回の1回目/後編へ>
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解説の村田諒太は、落ちついた口調で言った。
「凄いカウンター。あの打ち方はパッキャオがハットンを沈めたときみたいな」
オスカー・デラホーヤを破ってスーパースターの階段を駆け上がるマニー・パッキャオが2009年5月2日、スーパーライト級に上げて臨んだ“ヒットマン”リッキー・ハットンを2ラウンド残り8秒、左カウンターで沈めた一撃は、今もボクシングファンの語り草になっている。パッキャオのベストバウトという声だって少なくない。
同じラスベガスのMGMグランド、5月20日のWBO世界スーパーフライ級決定戦において衝撃は繰り返された。主人公は“ネクストモンスター”と称される無敗のサウスポー、中谷潤人である。
最終12回、左を狙うアンドリュー・モロニーに対して沈めた自分の頭を右に移動しつつ力をため込んでいた左オーバーハンドを肩越しからぶっ放した。無防備の顔面を無慈悲にとらえた一発に、モロニーは両足が力なく前に折れるようにしてリングに倒れて大の字になった。レフェリーはすぐさま両手をクロスしてダメージをチェックしなければならないほどの威力であった。
「パッキャオのあのKOシーンはもちろん知っています。村田さんにそういう連想をしてもらったのはありがたいし、光栄なことですね」
既に相模原のM.Tジムでトレーニングを再開している2階級制覇王者は恐縮そうに、うれしそうに語った。
どうしても衝撃のKOシーンばかりに目がいきがちだが、25歳の底知れぬ潜在能力を天下に示した一戦でもあった。中谷本人に試合についてじっくりと振り返ってもらった。
「当たれば倒せるだろうな、と」
――まず立ち上がり、距離を詰めてくるモロニーに対してフットワークを使って右ジャブから組み立てつつ、左カウンターを合わせよう、と。
中谷潤人(以下、中谷) モロニーが出てくるのは予想どおりでした。まずは(パンチを)もらわないというのとタイミングが合えばパンチを当てていきたいくらいのディフェンシブな感覚で試合に入りました。ただ思ったよりも前に来たので左を合わせるタイミングは取りやすかったし、結構、出した感じはありましたね。そのなかでも打ち気になりすぎず、距離をしっかり取ることに集中はしていました。
――1ラウンドの動きだけ見ても、かなりコンディションが良さそうに見えました。