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“エンゼルス撮影40年”大谷翔平のガッツポーズを狙う写真家(63歳)が忙しすぎる…「三塁側は早いもの勝ち」「でも、ずっとアナハイムにいて」
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph byNanae Suzuki
posted2023/06/28 11:02
カメラマン歴40年以上のアメリカ人フォトグラファーが明かす「大谷翔平の試合日ルーティン」とは
大谷のガッツポーズには“共通点”があった…
エンゼルス入団以降、私の大谷に対する印象は変わらない。とにかく頭がいい。そして誰に対してもフレンドリー。三振を奪う、特大ホームランを打つ、四球で出塁する。そんなとき、全身で喜びを表現することがあるが、それらはすべて「大事な場面に限って」という共通点がある。試合の展開を読み、シチュエーションによって自分が求められていることを理解している。その仕事を果たしたときに、感情を爆発させる。だから、ファンの心を打つし、相手に不快感を与えることもない。その瞬間を収めた写真が輝くのは当たり前なのだ。
そしてもう一つ。大谷を見ていて感銘を受けることがある。スーパースターでありながら「チームの一員」であることを理解している点だ。決して、大物ぶらない。チームメイトに自ら話しかけ、笑顔でハイファイブをする。じつはこれまでの野球界のスターには、特別扱いされることに慣れている選手もいた。ファンへのサイン対応を怠ったり、失礼な行動をとったり。そこへ行くと、大谷はいつも“普通”だ。決して飾らない。これまで撮影した彼の写真を見ても、プレー以外のシーンでは、笑っていないカットを探すほうが難しいくらいだ。
「全打席撮影」が必要な“レアな打者”
ファンから愛される大谷は、カメラマンからすれば「忙しい」対象者である。なぜなら全打席、大谷に投げられるすべての球を撮影する必要があるからだ。カメラを構えていないと、すぐにホームランをぶっ放すのだから仕方がない。そうして大谷の打席が終わるやいなや、撮影した写真を契約している通信社に送信する。そこから写真のクレジットに記載されているようなフォトエージェンシーに送られるという仕組みだ。そうそう、大谷の場合は塁に出ても油断禁物である。盗塁のチャンスまでうかがっているからだ。つくづくとんでもない選手だと思う。