錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

公式サイト閉鎖で“引退騒動”も…錦織圭33歳、カムバックまでの1年8カ月に起きていたこと「1回はやめることもちらつきました」「フェデラーを見ていて…」 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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posted2023/06/24 11:02

公式サイト閉鎖で“引退騒動”も…錦織圭33歳、カムバックまでの1年8カ月に起きていたこと「1回はやめることもちらつきました」「フェデラーを見ていて…」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

1年8カ月ぶりの戦列復帰、下部ツアー大会優勝で「復活」を示した錦織圭。カムバックまでの期間は本人にとってどのような時間となったのか

「フェデラーを見ていて、最終的には30代後半くらいまではできるかなと思えた」

 フェデラーは、最後の2年間は膝のケガでほとんど試合には出られなかったが、37歳のウィンブルドンでは準優勝し、結局最後のグランドスラムとなった39歳のウィンブルドンでもベスト8まで勝ち進んだ。まさに「30代後半」までトップで戦い続けたフェデラーの足跡があったから、頑張れたのではないだろうか。絶望的だったあのタイミングでフェデラーに会えたことは、それからの7カ月の力になったに違いない。

30代という壁

 歴代のスター選手の多くは、30代前半でツアーを日常的に戦う生活をやめている。26歳でコートを去ったビヨン・ボルグは早すぎるとしても、ボリス・ベッカーやピート・サンプラスは31歳、ステファン・エドバーグは30歳、マラト・サフィンは29歳、パトリック・ラフターは28歳までしか実質的にプレーしなかった。 かつての常識の中であれば、31歳、32歳のときに復帰の見通しの立たないリハビリと過酷なトレーニングに意味を見出せただろうか。

 それと同じ理由なのかもしれない。今のチャレンジャー・レベルの大会ではひと昔前ならちょっと考えられないことが起きている。全仏オープンの前、フランスのボルドーのチャレンジャーでアンディ・マリーとスタン・ワウリンカが対戦した。グランドスラムの複数回優勝を誇る2人が、チャレンジャー大会の2回戦で、である。 彼らもまた今の錦織と同じ歳の頃にキャリアのどん底期を経験し、今の場所まで戻って来た。

「ケイ、やったね!」「君が大きな励みになってる」

 いま38歳のワウリンカは33歳のときに260位台まで落としたランキングを一度トップ20まで戻し、昨年は再び360位台まで転落したが、なお復活を目指して戦っている。今年2月に再びトップ100入りを果たした。

 36歳のマリーのほうは、32歳のときに500位台まで落ちたが、コツコツとポイントを重ね、2018年の4月以来最高位となる38位にいる。

【次ページ】 今まで錦織をどれほど欲していたか、気づく

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