錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
公式サイト閉鎖で“引退騒動”も…錦織圭33歳、カムバックまでの1年8カ月に起きていたこと「1回はやめることもちらつきました」「フェデラーを見ていて…」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2023/06/24 11:02
1年8カ月ぶりの戦列復帰、下部ツアー大会優勝で「復活」を示した錦織圭。カムバックまでの期間は本人にとってどのような時間となったのか
偶然にも錦織の優勝と同じ日、ノッティンガムの芝のチャレンジャー大会で優勝した。2週連続のチャレンジャー優勝だった。このランキングならもうチャレンジャーのレベルではないが、そこで勝ち星を求めたのはウィンブルドンに向けた本気度の表れだろう。しかしこの日、自分のことより「復帰戦優勝、ケイ、やったね!」とツイートした。錦織はすぐに感謝のメッセージを返している。
「ありがとうアンディ、君が大きな励みになってる」
Thank you Andy! You are a big inspiration. https://t.co/D02t9A1JL1
— Kei Nishikori (@keinishikori) June 18, 2023
今まで錦織をどれほど欲していたか、気づく
臀部の故障との戦い、引退表明との大誤解も生んだマリーの涙の記者会見からの手術と復活の道のりを見てきたのだ。マリーだけではない。ケガからの復活が叶わなかったライバルを何人も知っている。チャレンジャーとツアーのレベル差はもちろんわかっている。それでも、「USオープンに向けて、もっとレベルを上げて、トップ100にとりあえず早く入れるようにがんばります」と最後に誓えたことこそ、この5試合の収穫だ。
これから錦織が戻っていく世界は、かつていた世界からは様変わりしている。フェデラーは引退し、ラファエル・ナダルも来季限りの引退を決意したようだ。ノバク・ジョコビッチは健在だが、その地位を脅かそうとしているのは、錦織不在の間に台頭してきた10代から20代前半の若者たちである。カルロス・アルカラスに、ヤニク・シナーに、キャスパー・ルード……彼らとは一度も対戦したことがない。いつか対戦する日が楽しみだ、などと呑気なことは言えない。むしろ怖いような気もする。
錦織がビッグ4を追いかけ、渡り合った時代はもう過去のもの。わかっていても、これから再び始まりそうな<錦織のいる時代>へのこの期待感は何だろう。失われていたものが突如目の前に現れたとき、人は今までそれをどれほど欲していたかに気づくのだ。
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