錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

公式サイト閉鎖で“引退騒動”も…錦織圭33歳、カムバックまでの1年8カ月に起きていたこと「1回はやめることもちらつきました」「フェデラーを見ていて…」

posted2023/06/24 11:02

 
公式サイト閉鎖で“引退騒動”も…錦織圭33歳、カムバックまでの1年8カ月に起きていたこと「1回はやめることもちらつきました」「フェデラーを見ていて…」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

1年8カ月ぶりの戦列復帰、下部ツアー大会優勝で「復活」を示した錦織圭。カムバックまでの期間は本人にとってどのような時間となったのか

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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 テニスが好きな、テニスに関わる日本人として、錦織圭のいた時代を生きることができた人は皆幸せだった。しかも<ビッグ4>のいる、テニスの史上最強時代と重なっていたのだ。しかし、その興奮にも高揚感にも踏ん切りをつけなくてはいけないと覚悟し始めたのはいつ頃だろうか。股関節のケガから足首の捻挫というケガの連鎖で、錦織が観客のいるコートに立たない月日は1年8カ月にも及んだ———。

重い足取りで審判台に…

 昨年10月にランキングポイントは全て失効していた。故障による長期のツアー離脱でランキングを失うのはキャリアで2度目のことだが、前回は20歳の若さだった。33歳の今を同等に見ることはできない。4月に公式サイトを閉鎖するという発表をすれば、SNSはついに引退かと騒いだ。

 ノーランカーの状態のまま8カ月。日本時間の6月14日の朝、カリブ海に浮かぶ島国プエルトリコのパルマスデルマールで、賞金総額8万ドルのチャレンジャー大会の初戦のコートに立った元世界4位は、そこから5試合を勝ち抜きトロフィーを抱いた。世界のテニスの中心がヨーロッパの芝にあるこの時期でもあり、対戦した相手に250位以上の選手はいなかったが、相手のレベルを問う段階ではない。「1試合勝つのに何週間、何大会もかかると想像していた」中での快進撃だった。

 復帰の時期はこれまで何度も上書きされてきた。昨年の1月には内視鏡の手術を受け、10月の楽天ジャパンオープンはフロリダの自宅と有明テニスの森公園をリモートでつないでファンに姿を見せるのみ。11月のユニクロ主催のイベントでは帰国したが、その2カ月前にとうとう引退を発表したロジャー・フェデラーとのエキシビションマッチが叶わず、重い足取りで審判台に上っただけだった。

30代後半くらいまではできるかなと思えた

 錦織を待つ大勢の記者たちを気遣うように応じた囲み会見では、長いリハビリ生活での精神状態を聞かれ、「危ないときもありましたね。1回はやめることもちらつきましたし」と答えた。危機をなんとか乗り越え、復帰が見えてきたところで足首を捻挫したと説明し、「この1カ月はテニスができていないので、いつ出られるかは明言できない」と視線を落とした。話を聞けば聞くほど悲嘆の色が濃くなる3分ほどのやり取りの中で、しかし一つだけ希望をつなぐ言葉を聞いた。

【次ページ】 30代という壁

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