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大谷翔平はなぜ6月に覚醒したのか?「グリップエンドの位置が変わった…」番記者が見たホームラン量産に至るまでの“数センチの変化”
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph byGetty Images
posted2023/06/16 17:01
現地時間6月15日のレンジャーズ戦で22号2ランを放った大谷翔平。直近7戦6発と、まさに「手が付けられない」状態に入っている
以前、大谷はこう話したことがある。
「しっかりとした方向で力が伝わっていかないと、(バットが)いい軌道に入っていかない。同じように振っていても、最初の構えの時点で間違った方向に進んでいると、いい動きをしてもいい結果につながらない」
バットを振り出す前の段階で、ある程度、勝負は決まる。
だが難しいのは、この構えに答えはない、ということだ。体のコンディションによって、感覚は日々変わっていく。だからこそ大谷は、常に「心地よい構え」を追い求めている。
5月下旬、大谷翔平の「構え」が変わった日
5月29日。調子が上がらなかった本拠地から、中西部のシカゴに場所を移した。
初戦で4打数無安打に終わり、迎えた30日の第2戦。大谷の構えに、目に見えて変化があった。
構えた時のグリップエンドの位置を数センチほど下げたのだ。
その第1打席、少し詰まって中飛に倒れたが、いい角度でボールは上がった。そして、第2打席は高めの真っ直ぐを強烈に中堅へ弾き飛ばした。地元放送局のアナウンサーは叫んだ。「翔平が月に向かって打った!」。今季13号は会心の当たりだった。
この翌日から完全に全開モードに突入し、「ショータイム」が始まった。
31日は1試合2発。そして大好きな6月に入ると、いよいよ手が付けられなくなっていく。
6月12日には、西地区首位のレンジャーズ相手に再び1試合2発を叩き込み、リーグ一番乗りで20号に到達。本塁打ランキングでヤンキースのアーロン・ジャッジを抜き、単独トップに立った。
試合後の言葉が、その充実ぶりを物語っていた。
「ボールの見え方も、結果も良かった」