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大谷翔平はなぜ6月に覚醒したのか?「グリップエンドの位置が変わった…」番記者が見たホームラン量産に至るまでの“数センチの変化”
posted2023/06/16 17:01
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph by
Getty Images
大谷翔平のバットが止まらない。現地時間6月12日の1試合2発、14日の21号に続き、投手として先発した15日にも22号2ランを放ち、直近7戦6発でア・リーグ本塁打ランキングのトップを独走。13本塁打で月間MVPを受賞した2021年6月の再来ともいえる爆発を見せている。5月はやや停滞していた大谷のバッティングは、なぜここにきて劇的な上昇カーブを描いているのか。現地で大谷を追う番記者の阿部太郎氏が、“覚醒”の裏側に迫った。
明らかに“何か”を探っていた5月
5月19日からのホームスタンド9連戦。大谷の調子は下降線に入っていた。
ポツポツと本塁打は出ても、総じて打撃の内容は良くない。ボール球に手を出し、粘れない。苛立ちも見えた。
5月23日。珍しく、屋外でフリー打撃を行った。今季はヤンキースタジアムで実施して以来2度目。本拠地での屋外フリーとなれば、昨年の4月下旬以来のことだった。
5月27日のマーリンズ戦、同点の9回に外に逃げるシンカーを当てにいって三直。本来の力強いスイングができなかった。ベンチに戻ると、ヘルメットを叩きつけた。悔しさと怒りが滲む。
この日、大谷は自身の打撃について「振っているコースが難しいコースなので、いい結果に繋がっていない。見え方自体は悪くない」と振り返ったが、状態を上向かせるため、明らかに“何か”を探っていた。
タブレットと格闘し、「理想の構え」を追い求める
大谷は常にタブレットと格闘している。
打席を終えた後のベンチで、試合前のクラブハウスで。自身のバッティングの映像をチェックし、毎試合、毎打席、修正を重ねる。
こだわっているのは、構えだ。不調の時は特に、ウォームアップ中やベンチなど、何かを思案するように、ボールを迎え入れる構えの動作を繰り返す。
持論は「構えで(打撃の)8割5分決まる」。打撃の話を聞けば、常にこの言葉が出る。