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「アメリカ到着後に戦力外を知った」元巨人・山口俊が語る“日本ではありえない”メジャーのビックリ事件簿「背番号まで考えてたのに…」
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byGetty Images
posted2023/06/12 11:03
昨季をもって現役を引退した山口俊にインタビュー(中編)。写真は2020年のブルージェイズ移籍時
「いざ僕がサインした後に、結構な選手が入ってきて。思っていたのと全然違うじゃん、競争が激し過ぎでしょと(笑)。結果的にジャイアンツはその年、ドジャースを抑えて地区優勝しているし、そりゃあ自分が入るスキもなかったよな、と今なら思います」
それでも招待選手としてジャイアンツのキャンプに参加し、オープン戦では4試合に登板し6イニングで1勝0敗、防御率1.50と結果を出した。巨人でプレーしたこともあるゲーブ・キャプラー監督からも、高く評価されていた。
「えっ、メジャー上がれるんじゃないの…?」
「キャンプが終わる2日前くらいだったと思います。クラブハウスのマネージャーが僕の通訳に言ったそうなんです。背番号を何番にするか決めといて、と。それを通訳が『俊さん、やりましたね』みたいに興奮気味に教えてくれて。えっマジか。メジャーに上がれるってことじゃん、と心の底から喜んだ。背番号の永久欠番をチェックして、このナンバー空いてるね、なんて話していたんですよ。よかったーとか言って」
ところが、待てど暮らせど山口の名前は呼ばれなかった。最終的に開幕でメジャー昇格はかなわなかった。
「結局、もう少しマイナーで頑張ってくれという通達をもらった。そのときはもちろんショックでしたけど、あの話はなんだったんだろうな、めっちゃ盛り上がっちゃったよなーと、通訳と笑い話になりましたね。その意味では、メジャー特有の“気持ちのたかぶり”は経験できた。マイナー契約から上がるってこんなにいいものなんだと。実際には上がってないんですけど(笑)」
アメリカでは何もかも疑ってかかった方がいいという教訓を得る“まさか”の連続。実際、マイナー契約で昇格を目指すケースでは、契約書にサインをする前にこの球団のGMは信用できるかどうかを入念に下調べする選手も多い。それだけ生き馬の目を抜く世界といえる。
「でも、システム的には僕はアメリカの方が向いているかもしれないですね。向こうは義理人情がなく、シビア。ビジネスとしては、その方がラクだと思います」