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「黒人のためのボイコット」を求められても、人類初9秒台の黒人選手は五輪に出場した…ジム・ハインズが明かした“同調圧力に屈しなかった理由”<追悼>
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAP/AFLO
posted2023/06/11 11:00
メキシコ五輪では100m、4×100mリレーで金メダルと2冠を成し遂げたジム・ハインズ。人類の歴史に名を刻んだレジェンドが生前、語っていたのは…
「メキシコシティー五輪は人生最高のレース、瞬間だった。世界最速を決める戦いで、世界中の人がそのレースに注目していた。そこで勝ち、世界一、世界最速の称号を獲得できたのは、究極の歓びだった」
あれから53年が経ち、彼の記録は更新されて久しい。しかし、ハインズは意に介さない。
記録は塗り替えられるためにある
「室内も含めて何度も記録を作ったが、記録は塗り替えられるためにある。記録が破られても人生は続いていく。それに一喜一憂している暇はないんだ」
彼には絶対に破られない記録がある。
「世界初、人類初という称号は一生誰にも奪われない。それはこれからもずっと自分だけのものだ」
人類で初めて100mで10秒の壁を破った男は、そう言って胸を張った。
ジム・ハインズHines Jim
1946年9月10日、米アーカンソー州生まれ。世界新で金メダルを獲得した1968年五輪100mでは、黒人が表彰台を独占した。五輪後はNFLのマイアミ・ドルフィンズに入団するも、期待に応えられず2年でキャリアを終えた。2023年6月3日に亡くなったことが世界陸連から発表された。享年74歳。
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