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「僕はサッカー人生の敗北者」元・市船のスーパーエースにして韓国Kリーグで最も愛される日本人、石田雅俊が輝きを取り戻すまで
text by
姜亨起Kang Hyeong Gi
photograph byFA photos
posted2023/06/07 11:00
4月1日の大田−ソウル戦で、生涯初となる“1部リーグでの得点”を挙げて喜ぶ石田
「自分の中の原理原則は必ず守り、チームのためにやるべきことは全部やる。そのうえで、失敗しても良いからサッカーを楽しむ」という石田は、今季リーグ戦第16節終了時点で9試合4ゴール。限られた出場機会のなかではあるが、最近では首位を走る昨季王者・蔚山現代との対戦で2得点を挙げるなど、1部の舞台でも確固たる存在感を示しつつある。
石田は2年前のとある出来事をきっかけに、サッカー界を超え韓国国内で一躍注目を集める存在となった。2021年10月のリーグ戦でプロ初のハットトリックを達成した試合後のヒーローインタビューで、カメラに向かって韓国語でこう言い放ったのだ。
「僕は今までのサッカー人生を通じて敗北者だと思っています。それでも、こうして人生を変えられる試合がいくつもあります。いずれにしても昇格、そのために人生を懸けてやりましょう。やります」
隣にいた通訳に頼ることなく、たどたどしくも懸命に思いを伝える姿が人々の胸を打ち、絶大な反響を巻き起こした。今や石田は“韓国で最も愛される日本人Kリーガー”と言っても過言ではない。
Jリーグへの尽きせぬ思い
「唯一、自分を褒められるとすれば、どれだけ失敗して上手くいかなくても、放棄せずにもがいて頑張ってきたことですね。だからこそ、今の自分がいることは間違いないです。
今はとにかく1試合1試合楽しみながら自分のパフォーマンスを発揮して、新しい課題を見つけて。ここまで一応サッカーをしてきた以上、最後のギリギリまで成長し続けたいという意欲があります。とにかくトライアンドエラーを繰り返して、少しずつ成長していく過程は楽しいです」
そして、韓国でプレーする今も心の奥底にあるのは、「再びJリーグの舞台に立ちたい」という思いだ。石田はインタビューの最後、こんなことを話していた。
「特に京都とか……これまで僕が在籍したチームのサポーターの方々がこれを読んでくださるのであれば、またいつか日本でプレーすることになったとき、あの頃とまったく変わった自分の姿をお見せしたいと伝えたいです」
日本で5年、韓国で5年目。28歳になった“市船のスーパーエース”は10年目となるプロ生活を「あっという間」と表現した。心の底からサッカーを楽しむ先に、石田のさらなる飛躍が待っているはずだ。
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