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「井上尚弥と対戦? もちろん可能だ」ラスベガス衝撃KOで絶賛の嵐…“新モンスター”中谷潤人(25歳)は何がスゴい?「欠点が見当たらない」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byAFLO
posted2023/05/28 17:01
聖地ラスベガスで2階級制覇を達成した中谷潤人(25歳)。衝撃KOに称賛の声が届いている
「中谷は最終ラウンドにハイライトとして刻まれるKO劇でモロニーを下し、WBOタイトルを手にした。中谷はモンスターだ」
英国に拠点を置くアンソン・ウェインライト氏がそう記せば、カナダのコーリー・アードマン氏も「ハイレベルの選手をこれほど一方的に支配してのKO劇に、私たちはもうしばらくお目にかかっていない」と絶賛。最新のランキングで、中谷は群雄割拠のスーパーフライ級でWBA王者ジョシュア・フランコ(アメリカ)、IBFフェルナンド・マルチネス(アルゼンチン)らを飛び越えての3位にランクされた。
同階級で上にいるのはエストラーダ(WBC王者)、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア/帝拳)、井岡一翔(志成)のみ。まだパウンド・フォー・パウンド入りなどが話題になる段階ではないとしても、一部から“ネクスト・モンスター”と呼称される中谷が急上昇の途上にいることは間違いないのだろう。
「矯正ポイントは見当たらない」
中谷がこれだけ高く評価される理由の1つは、モロニー戦の結末が破壊的だったというだけではなく、上に記したアードマン氏の言葉通り、12ラウンドにわたるタイトル戦をほぼ完全に支配し、多彩な形での強さを誇示したことなのだろう。中でも印象的なのはインサイド、ロングレンジの両方で戦えることを示したことだ。
中谷は身長172cm、リーチ170cmとこの階級では飛び抜けたサイズを誇りながら、その長い腕を折り畳んでの接近戦も得意とする。2回の先制のダウンは接近戦から左右アッパーで奪ったもの。さらに11回は遠い距離からの左ストレート、12回は狙い撃ってのカウンターの左フックと、それぞれ違った形で3つのダウンを記録した。
「離れてもよし、くっついてもよしっていう僕らしい対応力のあるボクシングをお見せできれば。そこに注目してほしいです」という戦前の本人の言葉通り、大舞台で圧巻なまでのオールラウンダーぶりを見せつけた。
「中谷は接近戦が上手。その距離でも様々なコンビネーションを放つことができる。アングルを変えたパンチが出せるのも魅力だ。すでに多くの武器を備えた選手だから、あとは(インサイドでの)フィジカルくらいしか矯正ポイントは見当たらない。これから先も、彼の戦いを見るのを私も楽しみにしているよ」
ESPN系列で全米中継された中谷対モロニー戦の解説者を務めた2階級制覇王者ティモシー・ブラッドリーはそう述べていたが、実際にこの万能ぶりこそが中谷の最大の魅力かもしれない。“距離を詰めて接近戦に持ち込めば”という短躯選手の常套手段が効果的ではない上に、これまで相手のパンチで効かされた姿を見せたことがない。タフネスも標準以上に思えるだけに、その攻略は並大抵のことではないはずだ。