ボクシングPRESSBACK NUMBER
「井上尚弥と対戦? もちろん可能だ」ラスベガス衝撃KOで絶賛の嵐…“新モンスター”中谷潤人(25歳)は何がスゴい?「欠点が見当たらない」
posted2023/05/28 17:01
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
AFLO
「中谷潤人がファン・フランシスコ・エストラーダと対戦したいって言っている? 実際にそのカードが実現したら、中谷が綺麗に倒してしまうよ」
5月20日、ラスベガスのMGMグランドガーデン・アリーナで行われた大興行の取材を終えた、ある大手メディアの記者は満面の笑みでそう述べた。
この記者の名前や媒体名は伏せるが、同じように感じていた現地メディアはもう少なくなかったのかもしれない。この日、“殿堂”と称されるMGMで中谷潤人(25歳/M.T)が見せたボクシングはそれほどに見事だった。少々気が早いようにも感じられるが、2階級を制覇し、将来の殿堂入りも確実なメキシコの英雄、エストラーダですらも敵わないのではないかと思わせるのにも十分だったのだ。
一部では早くも“年間最高KO”の声
元WBA世界スーパーフライ級王者アンドリュー・モロニー(豪州)と争ったWBO世界スーパーフライ級王座決定戦で、25歳の中谷は最終12ラウンドに2分42秒KO勝ちを飾った。2回と11回にダウンを奪っての完勝で、WBOフライ級に続く2階級制覇を達成。中でも最終回にカウンターの左で奪ったKOパンチは強烈だった。漫画「はじめの一歩」のドラゴンフィッシュブローに喩えられたフックをまともに浴びたモロニーは、キャンバスに叩きつけられ、しばらく動けなかった。
「これまでの僕は手数を出し、相手が嫌がるみたいなダウンシーンが多かった。なかなか(ハイライトになるような)シーンを生み出してこなかった。(今回はMGM という)いい場所でいいシーンを生み出せたので、良かったです」
幸いにもモロニーはしばらくして立ち上がったが、見ているものに戦慄すら感じさせるほどのノックアウトに、一部から“今年度の年間最高KO候補”の声が出たほど。このインパクトの大きな勝利のあと、その強さは、筆者がパネリストを務めるリングマガジンのランキング選定委員の間でも話題だった。