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兵役を終え台湾の誇りを取り戻した!
3年目の正念場を迎える阪神・蕭一傑。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO

posted2011/02/06 08:00

兵役を終え台湾の誇りを取り戻した!3年目の正念場を迎える阪神・蕭一傑。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS/AFLO

昨年開催されたアジア大会で銀メダルを獲得した台湾代表の蕭一傑(左)。隣は昨年秋のドラフトで阪神に1位指名された榎田大樹(アジア大会当時は東京ガス)。日本代表は銅メダルだった

 プロ野球12球団のキャンプがスタートした。

 キャンプ報道といえば、その年の大型新人ばかりが世間をにぎわせるが、キャンプ入りしているのは新人や人気選手だけではない。

 今シーズンでの飛躍を狙い、他にも多くの選手が気持ちを新たにキャンプ地に乗り込んでいるのだ。そんな、今年にかける男たちを追いかけてみるのも、キャンプのもうひとつの醍醐味である。

 なかでも特に注目している選手がいる。プロ3年目になる阪神・蕭一傑である。

 '08年のドラフト1位で入団した台湾人留学生であった彼も、はや3年目。若手が台頭しつつある阪神だが、こと「ドラフト1位」となると苦しんでいる。そのうちの1人である蕭は、2年目の昨シーズン、国際大会に出場するなど経験を積んできているだけに動向が気にかかる。

台湾代表として国際大会に出場し、懸案だった兵役を終える。

 昨シーズン前の春季キャンプ、蕭はローテーションの一角を狙っていたが、キャンプイン直後に胃腸炎を患い、そこから急ピッチで調整を進めたことでひじを痛めた。首脳陣の期待を裏切ったが、早々に戦力とみなされなかったことで、シーズン中は台湾代表としてハーレム国際大会やアジア大会に出場、年末には入団当時からの懸案だった兵役をこなし、充実した日々を送ってきたのである。

「3年目の今年はやらないといけないというプレッシャーを感じています。久しぶりに帰った台湾ではノーベースボール。兵役に行って、その後はほとんどボールを触らずに、トレーニングばかりしてきました。ボールを投げていない不安が少しありますけど、いつもと違うことをやろうと思って、そうしました。やらないといけない年なんで、気合が入っています」

 年が明けて、日本へと戻ってきた蕭はそう話していた。

 彼にとってのこの一年、何よりも大きかったのは、兵役の任務を果たしたことだ。

 高校1年から日本に留学してきた蕭は、台湾人の成人男性が果たすべき兵役をこなしていなかった。スポーツ選手の多くは、国際大会などの成績などが考慮されるケースが多いが、大学まで日本に通った蕭にはその機会に一度も恵まれなかったのだ。

 プロ入り前には日本人に帰化するという報道もあったが、実現には至らず、いたずらに月日だけが流れていた。期限が来れば、兵役をこなさない限り国外にも出られなくなる。当然日本でのプレーもできなくなってしまう。この頃、蕭は一般の成人男性と同様である1年間の兵役をこなさなければならない必要に迫られていたのだ。

【次ページ】 台湾代表として出場した国際大会で「何かつかんだ」。

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