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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「野球界のマーケットから離れた人材を」独立L茨城が“35歳のNHK元ディレクター”を監督にした理由「監督って難しい。でも魅力的な…」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2023/05/14 17:02
茨城アストロプラネッツの伊藤悠一監督と色川冬馬GM
茨城アストロプラネッツの色川冬馬GMとは、12球団合同トライアウトなど様々な現場で顔を合わせたことがある。色川氏は、アメリカ西海岸・アリゾナ州周辺で「アジアンブリーズ」というウィンターリーグ、サマーリーグを実施し、世界の野球にチャレンジしたい選手に活躍の機会を与えている。またそのネットワークでアメリカ、中米諸国の選手をNPB球団や独立リーグに紹介するなど、ユニークな活動を行っている。
僕らがリーチできない層にリーチしたい
茨城アストロプラネッツのGMに就任して以降、球団の強化に尽力してきたが、今回のトライアウト、監督人事はどういう意図で行ったのか? 色川GMにも話を聞いた。
「山根社長も言ったように、去年まで2年間一緒に仕事をしていた松坂賢が“アメリカMLBでの指導者に挑戦したい。アメリカで死んでも良い覚悟です”と言い出したので“仕方ないな”ということになって、後任監督を探すことになりました。でも、どんなに自分の電話帳を見ても、フェイスブックとかSNSの繋がりを見ても僕の中でピンとくる面白い野球人が存在しなかったんです。僕と共通認識がある人しかいない。それじゃ僕たちの成長にもならない、と。そこで、山根社長に『野球界のマーケットから離れた人がいいです。僕らがリーチできない層にリーチしたい』と言って、公募することになったんです。
僕はオンラインで10人くらい面談をしました。なかなかマッチした人と出会えなかった頃に伊藤さんと話したのですが、話す口調、僕の質問を理解しようとする姿勢、言葉一つ一つに気を付けている感じなどが、他の人と全く違った。それで僕が逆に興味を持っていろいろ質問して、1時間くらい話し込みました」
伊藤悠一監督によると、色川GMには、野球の監督とテレビディレクターの共通点について話をしたそうだ。
「ディレクターは究極、一人では何もできない人なんです。撮影も編集もできなければ、アナウンサーの代わりもできない。でも、そういったプロフェッショナル達をいかにやる気にさせるか。“自分が造りたい番組はこうです!”と言って動いてもらうかが、ディレクターの役割なんですね。
カテゴリーは違いますが、野球の監督も一人では、投げることも打つことも守ることもできない。そして、自分が造りたいチームはこうだってプランを出して選手に動いてもらうわけで、全く同じなんじゃないか、とそんな話をしました」
順序が逆で、勝利だけじゃなくその過程も大事だと
「野球界にいない人材を」と考えていた山根社長、色川GMには、伊藤監督のこの話が琴線に触れた。こうしてNHKディレクターの伊藤悠一は茨城アストロプラネッツの第4代監督に就任した。