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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「野球界のマーケットから離れた人材を」独立L茨城が“35歳のNHK元ディレクター”を監督にした理由「監督って難しい。でも魅力的な…」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2023/05/14 17:02
茨城アストロプラネッツの伊藤悠一監督と色川冬馬GM
4月8日、龍ケ崎球場で埼玉武蔵ヒートベアーズとの間で開幕戦が行われた。武蔵はこれも新任の西崎幸広監督。こちらは野球ファンなら知らぬ人もいない通算127勝、最多勝1回のスター投手である。しかしメディアの注目は伊藤監督に集まった。
試合は立ち上がりから荒れ模様で、茨城の開幕投手二宮衣沙貴は、初回に走者を出した挙句、武蔵の6番町田隼乙にいきなり3ランホームランを打たれる。伊藤監督の初仕事は、球審に「投手交代」を告げることになってしまった。
冷たい雨が降る中、試合はワンサイドゲームとなり、記念すべき初戦は6回途中コールド0-9の完敗に終わった。翌日の神奈川フューチャードリームスとの試合では3-1で初勝利を挙げたが、5月12日時点で5勝12敗と負けが込んでいる。チーム防御率はリーグ最下位の5点台と投手陣が苦しい状態だ。
「監督って難しい、でも魅力的だなとも」
伊藤悠一監督は、緒戦を戦ってどんな手ごたえを感じたのだろうか?
「シーズン始まって1カ月。試合を重ねれば重ねるほど、『監督って難しいな』と強く感じ始めています。一方で『魅力的な職業だな』という想いもあります。
投手交代や攻撃のサインといった采配や、日々の選手への声掛けなど、何通りもある中で、何を根拠に、どのように選択するかは非常に難しいです。実際に私の判断の遅れや、決断ミスで星を落とした試合もありました。
周囲は結果で判断し“結果論”を語りますが、私自身は“結果論”に至るまでのアプローチの部分が全くできていないと感じています。野球指導経験がない分、選手の特徴や流れを読む力が欠如しています。そのため、私の中で、決断できるだけの見立てができない。見立てができないため、コーチの考えを聞くだけで、決断に反映できません。
難しいと思う反面、これだけ緊張感のあるポジションを任せていただいている充実感もあります。35歳にまでなって、1つ負けるだけで、1つ采配をミスするだけで、ここまで悔しい想いを抱く。本気でチャレンジできる環境、チャンスをくださっている球団には感謝しかありません。
その恩を結果で返せるように、しっかり勉強し、一歩ずつ“監督”として歩みを進めていきたいです」
<前編/#1からつづく>
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