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「あ、ここで負けるのか、俺」村田諒太がゴロフキン戦を改めて見て抱いた“あの日と違う感情”「向こうもきつかったんだな」「悔しいと思うのは…」
text by
村田諒太Ryota Murata
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/05/05 11:05
ゴロフキンに上から右をかぶせられ、リング上で崩れ落ちた村田諒太。その瞬間の映像を見る村田は姿勢をただし…
第7、8ラウンドあたりは、ゴロフキンに攻め込まれながら、相手の攻撃が終わると反撃に出るというシーンが何度かあった。相手の打ち疲れに助けられた面もあるが、もう一人の自分の声に押されて出ていっていたのかもしれない。ピンチに立たされながらもそのたびに押し戻すことができたのは、メンタルトレーニングも理由だと思う（第7、8ラウンドともジャッジ3者とも10―9でゴロフキン）。
やっぱり自分の負けるところは見たくないものだ。第9ラウンドを前にして、パソコンの前で思わず姿勢を正した。開始ゴングと同時に打って出た僕の右ストレートと、ゴロフキンの右ストレートが際どく交錯した。
聞いた記憶のない「村田コール」が聞こえる
当たったのは相手のパンチだった。カウンターになって顎にもらったので余計に効いた。ニュートラルコーナーにくぎ付けにされ、重いフックを左右から浴びる。足に力が入らない。1度はリング中央に押し戻したが、ここでゴロフキンの強烈な右ロングフックをもらってしまう。さらにもう1度もらった右フックと合わせて効いた。
青コーナー付近に詰まったとき、村田コールが沸き起こった。試合中はとにかく必死で聞こえていた記憶はないのだが、僕は背中を押されたように再び前に出る。
ゴロフキンはラウンド序盤から仕掛けたラッシュで打ち疲れも見える。右の連打でゴロフキンを追いかける。久々にヒットの手応えが残る右ストレートも当たった。惜しむらくは、ここでボディーに1発ほしかった。
湧き上がるあの日とは違う感情
映像を見ながら、刻一刻と最後の瞬間が近づいているのが分かって少し緊張した。
あ、ここで負けるのか、俺。
