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「あ、ここで負けるのか、俺」村田諒太がゴロフキン戦を改めて見て抱いた“あの日と違う感情”「向こうもきつかったんだな」「悔しいと思うのは…」

posted2023/05/05 11:05

ゴロフキンに上から右をかぶせられ、リング上で崩れ落ちた村田諒太。その瞬間の映像を見る村田は姿勢をただし…

text by

村田諒太Ryota Murata

PROFILE

photograph by

Takuya Sugiyama

　2022年4月9日、ゲンナジー・ゴロフキンとWBA・IBF世界ミドル級王座統一をかけ、激闘を繰り広げた村田諒太。今年3月に現役引退を表明した“闘う哲学者”が明かす「あの一戦で考えていたこと」とは――。4月27日に刊行された著書『折れない自分をつくる　闘う心』（KADOKAWA）より一部を転載してお届けします（全3回の第3回／初回は#1、前回は#2へ）

　第6ラウンド、ゴロフキンの戦い方が明らかに変わった。前のラウンドで手応えを得たのだろう、足を使うよりも、完全に攻撃モードに切り替えてきた。開始30秒過ぎ、僕は右フックをガードの外側からあごにたたき込まれ、マウスピースを飛ばされた。

崩された村田の想定イメージ

　それほど効いたパンチではなかったが、ゴロフキンは自信をつかんだようだった。その証拠に、マウスピースをつけて再開した直後、一気にコンビネーションをまとめてきた。左右、上下、はたまた頭上からパンチが飛んでくる。最初の1分間、僕はゴロフキンのパンチをブロックすることが精いっぱいで、ほとんど手を出せなかった。

　映像を見て分かったことだが、僕は下肢に力が入らなくなり、徐々に姿勢が突っ立ってパンチに体重が乗らなくなっていた。特別にどのパンチで効かされたということはないが、疲労が少しずつ動きを鈍くしていた。

　残り1分を切り、前半の攻勢でポイントを押さえたと考えたゴロフキンがリングを広く使い始める。僕は必死に前に出るが、5ラウンドまでのような強いパンチを打ち込めない。ここまでで最も劣勢のラウンドだった（ジャッジ3者とも10―9でゴロフキン）。

　戦前、僕の想定では、ゴロフキンは前半の貯金をキープしながら中盤の第6～8ラウンドあたりを休むイメージがあった。そこで休ませずにしっかり攻め立てる。そんな戦いのイメージを持っていたのだが、僕の方に肝心の余力がなくなりつつあった。