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「打て、打て、攻めろ、攻めろや!」村田諒太が思わず叫んだゴロフキン戦のある場面…本人は映像を見ながら「勝てる試合だったなあ」
posted2023/05/05 11:03
text by
村田諒太Ryota Murata
photograph by
Naoki Fukuda
「大きな勝負どころ」第2~3ラウンド
続く第2、第3ラウンドは、この試合の大きな勝負どころになると僕は試合前から考えていた。ゴロフキンは序盤に強く、その強打でこれまでKOによる36勝のうち19試合は3ラウンド以内に終わらせている。第5ラウンドあたりまでにペースを握り、中盤は流して終盤に再びギアを上げる。映像を何度も見返した僕は、最近のゴロフキンの戦いぶりにそんな印象を持っていた。
自分も最初の3ラウンドでゴロフキンに簡単に主導権を握られるようだと、勝機はほぼついえてしまう。これまでの対戦相手なら僕がガードを固めてプレスを強めれば、圧力に押されて自然と崩れてくれたが、ゴロフキンにはそんな戦い方は通用しないと分かっていた。
先に主導権を奪おうと果敢に攻めていけば、ゴロフキンの強打と正面衝突を起こす危険がつきまとうが、リスクを覚悟で先にいかなければいけない。ここは何が何でも取ると腹を決めていた。
映像を見る村田が思わず「ナイスボディー!」
画面に映るゴロフキン、そして僕はまさにイメージしていた通りの姿だった。
第2ラウンド開始早々、ゴロフキンがジャブの強度を強め、左フックやボディーを交えたコンビネーションをテンポよく繰り出してきた。20秒過ぎ、僕が少し強引に左ボディーを伸ばして右フックをたたきつけると、ゴロフキンが後退した。
「ナイスボディー!」
映像を見ながら思わず声が出る。ゴロフキンが嫌がっているのが分かる。ゴロフキンが再び左の上下打ち分けで場内のどよめきを誘うが、僕はお構いなしに前に出る。そして、右ボディーストレートを突き刺すと、ゴロフキンの顔に先の左ボディーをもらったとき以上の苦悶の色が浮かんだ。