もっとゴロフキンのダメージに気づいていれば…

　そこからはこのラウンドを通して、ゴロフキンがロープを背負いながらリングを回る展開になった。僕はこの日一番の武器になった右ボディーストレートを再三伸ばし、ショートの右アッパーもタイミングよく入った。

　映像を見ながら、ちょっと唇を噛むような思いだった。

　試合中にもっとゴロフキンのダメージに気づいていれば。この右ボディーストレートがこんなに有効だったとは。試合中は必死なこともあって、そこまでの感触を持てていなかった。ラウンドの終了間際、上への右ストレート2発から再び右ボディーが入った。このラウンドは確実に取った手応えがあった（採点ではジャッジ2人が僕、1人はゴロフキンにつけていた）。

村田が改めて感じた「僕は対応できていた」

　第3ラウンド、ゴロフキンもこのままではいけないと思ったのだろう、一段と攻勢を強めて主導権を取りに来た。開始早々、ジャブに右ショートアッパー、右フック、左ボディーと多彩なパンチを交えたコンビネーションで一気に攻めてくる。

©Takuya Sugiyama

　ゴロフキンの代名詞ともいえる、上から真下にたたき落とすような「脳天フック」もその中にあった。ほかのボクサーがおよそ打つことのない類いのパンチだが、ゴロフキンは肩周りの筋肉が柔らかく肩甲骨の可動域が人よりも広いのだろう。予想もしない角度からパンチが飛んでくるのだ。場内も大きくどよめく。

　それでも僕は対応できていた。ブロックで完全なクリーンヒットは許していない手応えがあったし、ゴロフキンのパンチにそれほど威力も感じていなかった。相手の連打をしのいだ後は、僕が攻勢に転じた。

第3ラウンドはジャッジ3者全員が村田を支持

　開始30秒過ぎ、左ボディーから右ボディー、そして右フックを上に2発つなげると、ゴロフキンが第2ラウンドに続いて後ずさりした。「うん、いいぞ」。映像を見ながら、再び自然と声が出る。右のパンチだけでなく、左もジャブにフックとスムーズに出ている。相手に合わせることなく、先手、先手で攻めることができていた。1分過ぎの右フックの相打ちも自分のパンチの方が分がよかった。

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