ガードはしっかり上がっている。試合中は「そんなの効かねえよ」と強気を保っていたのだが、映像を見るとダメージが少しずつ蓄積していっているのが分かった。

©Takuya Sugiyama

　残り1分を切ってから、ゴロフキンは足を使いながら巧みに休んでいる。僕の右ショートアッパー、左フック、左ボディーも入っているが、もっと手数がほしい。

開始からフルスロットルの村田に対し、ゴロフキンは…

「打て、打て、攻めろ、攻めろや！」　

　画面の中の自分に対するもどかしい思いが思わず口を突いて出た。ゴロフキンと一緒に休んでしまっているように見えたからだ。裏を返せば、自分に余裕がなくなりつつあった。ラウンド終盤、僕には珍しくパンチを打つ際に「ハッ」「ウッ」と声が出ていた（ジャッジは2人がゴロフキン、1人が僕をそれぞれ10―9で支持）。

　試合後に知った採点表では、第5ラウンドを終えてゴロフキンのリードとしたジャッジが2人（3ポイント差、1ポイント差）いた一方で、僕の1ポイントリードとつけているジャッジも1人いた。ほぼ互角の展開といっていい。もっとも、試合中に僕の頭の中にポイント計算は全くなかった。

　もっと言えば、ペース配分もなかった。開始からフルスロットルで走り続けるボクシングは、KO決着しか考えていないような戦い方だ。もちろん、それだけの力を振り絞らなければゴロフキンの強打を止めることはできなかったかもしれないという思いはある。ただ、ポイント計算やペース配分といった戦略的な部分で、もう少し自分に引き出しがあればとも思う。ゴロフキンにはそれがきっとあったはずだ。その差が、ここから如実に表れていく。

＜続く＞

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