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「ヤンキースでプレーしたら75本打つ」大谷翔平はなぜニューヨークでも大人気だった? 現地記者が実感した“オオタニ争奪戦”への期待値
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2023/04/27 17:02
ニューヨークでも大きな注目を浴びていた大谷翔平
「私はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも大谷の打撃練習を見たが、素晴らしいエンターテインメントだった。長い間、この仕事をやってきたが、あれほどの打球を飛ばせる選手はほとんどいない。今夜起こったすべてのことの中でも、最もエキサイティングだったのは大谷の打撃練習かもしれない」
1995年からMLBを取材するニューズデイのコラムニスト、デビッド・レノンはそう目を丸くしていたが、同じような感想を持ったのはレノン記者だけではあるまい。20スイング中12本が柵越えで、中には推定飛距離140mという中堅への特大弾も。大谷が珍しく屋外での打撃練習を行った理由は定かではないが、いつもながら、それは“練習でもカネが取れる”と感じさせるだけの一大スペクタクルだったのだ。
“WBC”よりも“FA”への期待感?
過去2年とはニューヨークの雰囲気が変わった背景として、まずはやはり3月に行われたWBCでの大谷の縦横無尽の働きが影響していたのだろう。
WBCのアメリカでの盛り上がりが日本ほどではなかったのは確かだが、それでも球界関係者の多くがこの大会に注目していた。まだ公式戦が行われていない時期に開催されたイベントを、選手、ファンも様々な形で目の当たりにしたことは間違いない。特に劇的な結末となったアメリカとの決勝戦、その9回表に大谷が盟友マイク・トラウトと一騎討ちを演じたラストシーンのインパクトは大きかった。
そして、もう一つ。WBCの活躍と同等かそれ以上に、大谷が2023年のオフにFAの権利を得るという事実が大きいに違いない。今が旬の2ウェイモンスターをめぐる自由競争は歴史的なものとなることが確実。ニューヨークを始めとする米東海岸のファンも、もちろんそのカウントダウンの存在に気づいている。
「最高級の投手であり、最高級の打者でもあるオールラウンドなアスリートの大谷のような選手がFAになったことはない。彼がどこに行くかにエキサイトしているよ」
ジャッジのそんな言葉にある通り、ボストン、ニューヨークでのフィーバーと言える騒ぎの根底には、オフに待ち受ける争奪戦への期待感が間違いなくあったはずだ。