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プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「お前を地獄に引きずり降ろしてやる」ジュリアvs中野たむにロッシー小川が見出した“狂気”「30年前の北斗vs神取とは少し違うけど…」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/04/22 11:06
横浜アリーナ大会に向けた記者会見で乱闘を繰り広げたジュリアと中野たむ。流血した中野は「お前を地獄に引きずり降ろしてやる」と言い放った
記者会見で乱闘、流血…ジュリアと中野たむの因縁
小川はさらに注目のカードをあげた。
「狂気という点では、ジュリアvs中野たむでしょう。30年前の北斗vs神取とは少し違いますけどね」
2020年7月の後楽園ホールでのワンダー・オブ・スターダム(白いベルト)王座決定戦。2021年3月、話題を呼んだ日本武道館での白いベルトもかけた髪切りマッチ。そして、2022年10月、武蔵野の森総合スポーツプラザでの『5★STAR GP』優勝決定戦。
ジュリアが「私からは何も奪えない」といえば、中野が「お前を地獄に引きずり降ろしてやる」と応戦する。
記者会見での乱闘、そして流血。中野は赤いドレスのままステージの床に倒され、頭から血を流しながらジュリアをうつろな目でにらんだ。
「1回、1回のインパクトが強いから、何回も見ている気にさせられてしまう。その中でどれだけ新しいものを見せられるか、何を残していけるかでしょうね。プロレスってやればやるほど熟していくわけでしょう。この2人は、これだけやってきたからこそ、プレミア性の高いカードになった。ジュリアと中野たむの“現在”を見せてくれればいいなと思います」
かつての“デンジャラス・クイーン”北斗晶と同じ肩書きで呼ばれるジュリアを、小川はこう比較する。
「ジュリアはいろいろな人と因縁があって、それを自分の色にしてドラマチックに見せる。ジュリアは北斗にないものを持っている。言葉は難しいけれど、プロレスにおける“美”というかね……。もちろん北斗にまったくないというわけではないが、そこが彼女の武器なのかな。たむは激情型なので、どれだけドラマ性のある関係が作れるか、でしょうね」
さらに小川は続ける。
「北斗は線が細いのに、体を痛めつけながらギリギリのところで戦ってきた。危ういものを見たいというファン心理をとらえたのかな。北斗はいつも満身創痍だったので試合前に痛み止めの注射を打っていましたが、ジュリアの場合は安定感があります。そして押しの強さもある。どちらもデンジャラス・クイーンと呼ばれていますが、似ているようで似ていない。
結局、ファンはどちらが勝つか、負けるかを見に来ると思うんですよ。いい試合だったかどうか、というのは結果論。ベルトだったり、他の何かだったり、失うものがあるというリスクの中で試合をして、どちらが勝つか、というのを見に来るんです」