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プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「お前を地獄に引きずり降ろしてやる」ジュリアvs中野たむにロッシー小川が見出した“狂気”「30年前の北斗vs神取とは少し違うけど…」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/04/22 11:06
横浜アリーナ大会に向けた記者会見で乱闘を繰り広げたジュリアと中野たむ。流血した中野は「お前を地獄に引きずり降ろしてやる」と言い放った
「選手は大変ですよね、この時代にやっていくのは…」
難しいのは、話題の作り方だけではない。SNS時代の選手の心労についても、思うところは多々ある。
「選手は大変ですよね、この時代にやっていくのは……。SNS上のひどい声について『ほっときゃいいよ』とは言っても、誰だって自分の名前が出ていたら見ちゃうじゃないですか。SNSが発信の場になっている以上、時代についていくために付き合っていくしかない面もある。SNSで観客動員数も変わってきてしまうんだったら、気にしないわけにはいかない。難しいけれど、負担にならない形を模索していくしかないですね。これから先、僕らの世代がいなくなって、完全にみんながSNS世代になったらと思うとね……。でも、5年、10年したら、また想像もしていない違うものが出てくるのかもしれない」
小川は「最近、本を書いたんですよ」と『女子プロレス55年史』(彩図社)という著書を差し出した。これまで見てきた名選手や名勝負、さらにはコレクションを紹介しているが、過去を振り返ってばかりもいられないという思いはある。
「仕事で45年、プロレスを見始めて55年、昔のことはよく覚えています。でも、思い出の中で生きているだけではダメじゃないかな。やっぱり現在進行形じゃないと」
小川はその時代時代に間近で見てきたプロレスと、自分の人生を重ね合わせて生きてきた。そして、65歳になった今もプロレスという仕事に直接携わっていることを幸せだと感じている。
「我々は団体として、一つ一つ歴史を作っているんです。たとえ次の日に忘れられてしまっても、歴史が消えることはない。そう思っていないと、プロレスの仕事って事務的になってしまいますから。お客さんには、横浜アリーナに来てよかったって思ってもらいたい。それは試合でも、試合そのものじゃなくてもいいんです。楽しみですよね。30年前の北斗晶vs神取忍を越えていきたい。そういう意味でも、横浜アリーナは特別な場所だと思います」
<前編から続く>
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