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プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「お前を地獄に引きずり降ろしてやる」ジュリアvs中野たむにロッシー小川が見出した“狂気”「30年前の北斗vs神取とは少し違うけど…」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/04/22 11:06
横浜アリーナ大会に向けた記者会見で乱闘を繰り広げたジュリアと中野たむ。流血した中野は「お前を地獄に引きずり降ろしてやる」と言い放った
「これからのスターダム」が見据えるもの
横浜アリーナは、「スターダムのこれまで」の集大成のような大会になるのかもしれない。
「今回はすべてに役者がそろっている。メルセデス・モネと岩谷麻優のIWGP女子選手権に、上谷沙弥と白川未奈の白いベルト戦もある。ひめかの引退試合や、アーティスト選手権の6人タッグ、ゴッデスのタッグマッチもある。フワちゃんの試合もあるし、本当に盛りだくさんです。駿河メイ、AZM対スターライト・キッド、星来芽依のタッグマッチがメインだという人もいて、それもいいことだな、と」
横浜アリーナ大会の先に、スターダムが何を見据えているのかを小川に尋ねてみた。
「今のお客さんは、女子プロレスが好きで見に来ている人だけ。高い席はあっていいんですが、子どもでも気軽に見に来られる値段設定が必要でしょう。私の少年時代は500円くらいの時がありましたから。小さなファンばっかりでした。裾野を広げていくなら、まずはそこからじゃないですか」
小川は「まだスターダムで現実になっていないのは、絶対的なスーパースターの出現でしょうね」と語る一方で、それが実際には難しいということも理解している。
「昔はアントニオ猪木が一人いればよかったけれど、今は何枚看板かじゃないと難しい。現実的には、どの会場でも次に行ったときにお客さんが1割、2割増えているというのが大事なのかな……。いろんな声がありすぎて、難しい時代ですよ。見ている人はみんな、なんでも型にはめたいんですよね。申し訳ないけれど、すべての人には合わせられない。昔はアントニオ猪木しかいないから、『アントニオ猪木がいいか、悪いか』だけなんですよ。今はいくら話題を提供しても、『次は何? 次は何?』ばかり。本当なら世界戦略とかビッグマッチをブチ上げたり、大会場開催を発表すればいいんでしょうけど、それにしても賞味期限は昔ほど長くない。野球だってWBCであんなに盛り上がったのに、ペナントレースが始まったら、その場その場の話題ばかりが消費されていく。私は大谷翔平しか見ていません。それがスーパースターなんです」
小川の自宅には大谷翔平のグッズがいっぱい並んでいる。モハメド・アリのサインもある。テーブルには、アントニオ猪木に関する本が高く積まれている。「猪木さんの本は全部集めちゃいました。亡くなってからでもこんなに出ているんですよ」と笑った。