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吉田正尚はWBCで活躍しすぎた…? レッドソックスの米ベテラン記者が明かすリアルな本音「ボストンの人々は新たなスターを渇望している」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2023/04/03 11:01
開幕戦で4番を任されるなど、レッドソックスで大きな期待をかけられる吉田正尚。新天地での戦いはまだ始まったばかりだ
吉田の1年目の成績を予想するなら、打率は.280くらいではないか。.290と言いたいところだが、少し慎重に.280としておきたい。本塁打は20本、OPSは.810ぐらいだろうと思う。それだけのものが残せれば、ルーキーとしてはいいシーズンだ。吉田にはそれくらいの力はあると私も見ている。
レッドソックスが吉田を獲得した直後、今回の大型契約に懐疑的な声が多かった。その当時からの評価、予測を上回る選手なのか、まだはっきりしたことは言いたくない。先ほど予想成績こそ述べたが、春季キャンプ、WBCの結果だけでその選手の価値を決めつけるべきではないと思う。評価を下すのは、メジャーのシーズン中、彼がプレーする姿をもっと見てからにしたい。
それでも少なくとも今、ボストンの多くのファンが「吉田は大型契約に値する」と感じているのは事実だろう。WBCでは大谷のすぐ後を打ち、ビッグステージであれだけの成績を残したのだからそれは当然だ。今オフ、生え抜きスターのザンダー・ボガーツがサンディエゴ・パドレスに去った後、ボストンの人々は新たなスターを渇望している。吉田がそのニュースターになってくれることを、今では多くのレッドソックスファンが望んでいるはずだ。
米記者が思い出す松坂大輔の喧騒
ただ、現時点で吉田への期待値を高くしすぎることは危険なことではあると思う。私の懸念材料は、これから様々な面で適応しなければいけない段階にもかかわらず、吉田に課せられる重責が莫大になっていることだ。WBCであれほど打ちまくったおかげもあって、今季開幕時の前評判はスーパースター級になってしまった。
今思い返しても、2007年、松坂がレッドソックスに入団したときの喧騒はもの凄いものがあった。あれほどの騒ぎの中でメジャー入りし、巨大なプレッシャーを背負った選手は他にはいなかった。吉田への期待感はそこまでではないとしても、WBCでの活躍、優勝でそれがより大きくなったのは確かだと思う。
新しい環境では周囲から受け入れられることが大事であり、レッドソックスの選手たちにその力量を認められたのは大きいのだろう。その一方で、WBCでごく一般的な成績を残していた方が、レッドソックスへの適応はもっと容易だったと言えるかもしれない。