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「(開幕投手は)察してはいました」過去2戦2敗、DeNA・石田健大30歳が目指す“3度目の正直”「大事なのは“吸い込まれない”こと」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph bySankei Shimbun
posted2023/03/27 11:03
DeNAの開幕投手に指名された石田健大。3度目の開幕のマウンドに立つ30歳はどのような思いで開幕を迎えるのか
「大事なのは、そこに自分が吸い込まれないこと。なにが起こっても冷静に対処できるように、またテンパることないように、心と体の準備をすることが大事になると思いますね」
そして5年ぶりの開幕投手、過去2敗を喫した苦い経験を生かすときが迫ってきている。「いけますか?」と尋ねると、石田は「大丈夫です」と、とくに語気を強めることなく静かに答えてくれた。
この数年、上手く行かないことも多々ありましたけど…
振り返れば、2度目の開幕投手を務めた2018年の後半から石田の投手人生は乱高下することになる。それまで順調に先発の務めを果たしてきたが、不振やチーム事情から中継ぎを任され、ときには先発に戻り、また故障によって思うように投げられないときもあった。2020年には中継ぎとして50試合に登板し26ホールドポイントを挙げるなど気を吐くこともあったが、翌2021年にはまた不調に陥るなど、もどかしくも不甲斐ないと感じてしまう日々を過ごしてきた。
そして昨季、石田は再び先発として復帰すると1年間を投げ切って7勝4敗、防御率2.95と結果を出し、開幕投手の栄誉を手に入れることができた。とくに開幕カードの阪神戦は、昨年4試合を投げて3勝無敗、防御率1.11。三浦監督いわく「キャンプや相性、状態を見て決めました」と、首脳陣の総意で石田の抜擢が決まった。
「この数年、上手く行かないことも多々ありましたけど、昨年1年間(先発として)しっかり回れたことがすごく大きかったと思います」
そう言うと石田は、どこか安堵したような表情を浮かべた。中継ぎとしても魅力的なピッチングをしてきたサウスポーであるが、昨年のピッチングやマウンド上での立ち振る舞いを見ると、やはり先発が合っていると感じられる。両サイドのストレートを軸に、チェンジアップ、カーブ、カットボールを駆使し、高低差と奥行きでじっくりピッチングを組み立てるスタイルは、石田の真骨頂だ。
戸柱恭孝、山﨑康晃の存在
紆余曲折ありながらも、苦しかった時期が「自分を強くしてくれた」と、石田は言う。その傍らには、いつも仲間たちの姿があった。とくに同級生で同期入団の山﨑康晃と、入団は石田より1年遅いが2学年上の捕手の戸柱恭孝の存在は大きかったという。